『Elementos de una sistemática filogenética, segunda edición』

Willi Hennig[Horstpeter H. G. J. Ulbrich 訳/Osvaldo Reig y Maximiliano Maronna 監修]
(2020年2月刊行, Editorial Universitaria de Buenos Aires[Manuales], Ciudad de Buenos Aires, 346 pp., ISBN:978-950-23-2944-4 [pbk] → 版元ページ

ウィリ・へニック『系統体系学』のスペイン語訳改訂版.Willi Hennig 『系統体系学』のスペイン語訳初版は1968年に同じ版元から出版された:Willi Hennig[Horstpeter H. G. J. Ulbrich 訳/Osvaldo Reig 監修]『Elementos de una sistemática filogenética』(1968年刊行,Editorial Universitaria de Buenos Aires[Manuales de EUDEBA / Biologia], Buenos Aires, viii+353 pp. → 目次).英訳版『Phylogenetic Systematics』(1966)は誰もが知っている生物体系学の基本書だが,ほぼ同時期にブエノスアイレスで出版されたスペイン語訳『Elementos de una sistemática filogenética』(初版1968)は日本国内に所蔵図書館は皆無である.

半世紀後に再刊されたこの第2版は画質が悪かった初版の挿絵の多くがトレースし直されているようだ.Esteban Hasson の新しい序文(Prólogo)が巻頭に付けられている(pp. 9-11).ざっと比較してみると,本文組版は大幅に改良されて読みやすくなっている.図版のいくつかもリトレースされてはいるが,グラフィックデザイナーの手腕のせいかあまりクォリティがよろしくない.索引は作り直されていて上出来.

わざわざスペイン語版まで買い求めることはなかったのかもしれないが,本の方から呼び声がかかってきたので,これは何かの “縁” と覚悟して日本に来てもらった.本改訂訳本もきっと日本にはぜんぜん入ってこないだろうから,ぜひ見たい人は観音台へどーぞ.

脇道ネタ —— 改訂訳本の冒頭に付けられている Esteban Hasson の序文(pp. 9-11)には,近年の系統推定法間の比較に言及している.最節約法(parsimonia)とベイズ法(bayesiano)はすぐわかるが,最尤法は「máxima verosimilitud」と書かれている.「likelifood」のスペイン語訳は「probabilidad」のはずなので,いささか混乱するだろう(フィッシャー先生が化けて出るにちがいない).かと言って,「verosimilitud」と訳すと,この単語は英語の「verisimilitude」だから,ポパー卿が「真理近接性とは」と演説しに来るにちがいない.悩ましい.