『死の海:「中河原海岸水難事故」の真相と漂泊の亡霊たち』

後藤宏行
(2019年8月21日刊行,洋泉社,東京, 383 pp., ISBN:978-4-8003-1672-1

読売新聞読書委員をしていたとき,おなじ読書委員だった宮部みゆきさんが本書を書評候補として回覧された:読売新聞書評:宮部みゆき幽霊の持つ心情的意味」(2019年11月17日).津市の海岸で多数の女学生が溺死したこの事故のことは,松谷みよ子編『現代民話考』にも採録されていたと記憶していたので,読書委員会席上でそうコメントしたところ,宮部さんが言うには「その “怪談” の真相が書かれている」とのことだった.

その後,版元の洋泉社がなくなったので(2020年),本書を手にする機会が失われたが,ふと思い立って古書店経由で入手した.当事者・関係者の証言や法定記録などを踏まえて,この水難事件の背景と余波まで詳細にたどっている.

旧・洋泉社からはいい本が出ていたのでどこかが引き継がないかな.洋泉社が宝島社に “併合” されると聞いて,ワタクシはまずは〈洋泉社y新書〉を手当たりしだいに買った.丸田祥三『棄景』,渡辺京二 『黒船前夜:ロシア・アイヌ・日本の三国志』,杉浦貴美子『地図趣味。』,田中美穂『わたしの小さな古本屋:倉敷「蟲文庫」に流れるやさしい時間』などの洋泉社本はもっててよかった.