『研究者、生活を語る——「両立」の舞台裏』感想

岩波書店編集部(編)
(2024年10月18日刊行、岩波書店、東京, x+252 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-00-061661-4目次版元ページ

それぞれの研究者に降りかかる人生の現実問題への対処(本書では「育児」と「介護」が中心となる)を知る上で良書。

ある研究者は「どの分野にも、次から次へと輝かしい業績を叩き出す研究者がいるが、決して視界に入れてはいけない。万が一、目に入ってしまったら、幻影だと思おう」(p. 137)と言う。「家事や育児の任務を負わない人と同じ土俵で戦おうとすること自体、狂気じみている。競争心はかなぐり捨てなさい」(同)が師の教えとのことだ。個々の研究者ごとに取り巻く事情はさまざま。

身近に “ロールモデル” はいないかもしれない。しかし “嵐” の年月が通り過ぎて振り返れば、自分自身が “ロールモデル” になっているかもしれない。ここでいう “ロールモデル” とは「スーパーマン/スーパーウーマン」ではけっしてない。

本書は、自分が進むべき道を研究者自身が切り拓く前著:岩波書店編集部(編)『アカデミアを離れてみたら——博士、道なき道をゆく』(2021年8月4日刊行,岩波書店,東京, viii+238 pp., 本体価格2,000円, ISBN:978-4-00-061483-2目次感想版元ページ )の “姉妹編” に位置づけられるだろう。

リアルな研究者人生を語るこの二冊はどちらもタイムリーな出版だとワタクシは思う。