『オルデンバーグ:十七世紀科学・情報革命の演出者』

金子務

(2005年3月10日刊行,中央公論新社[中公叢書],ISBN:4120036189



残る章を読了.全部で170ページほど.第3章「世界最初の学術誌『トランザクションズ』の誕生」は,科学情報の流通媒体としての学術誌『トランザクションズ』の創刊にからむさまざまなことども.王立教会公認だはあったが,あくまでもオルデンバーグの「個人雑誌」として発行されたという.要するにオルデンバーグがひとりで全部やったわけですね.

彼の死後,跡を継いだ仇敵ロバート・フック,ぜんぜんダメじゃん.続く第4章「共同研究の館,アカデミーの出現」は母体であるアカデミーすなわち王立教会の制度を他国のアカデミーと比較する.

第5章「情報ネットワークの構築と郵便事情」は郵便制度史みたいでイマイチ消化不良.ジャーナルの流通を考える上で郵便制度がどれくらい確立していたかが重要な要因であることはわかるんだけど.終章「オルデンバーグの没後とその意義」.ん? ちょっと月並みな総括じゃないですか.

— これだけ歴史のあるアカデミーだと,一言一言が重みをもってくる.王立協会の格言のひとつ〈Plus ultra〉=「もっと先へ」は p. 214 に出てくるジョゼフ・グランヴィルの名言だが,もうひとつの〈Nullius in Verba〉=「だれの言葉でもなく」については言及がなかったなあ.