『構造主義の数理:ソシュール、ラカン、ドゥルーズ』

落合仁司
(2020年1月30日刊行,ミネルヴァ書房,京都, vi+165 pp., 本体価格2,400円, ISBN: 978-4-623-08816-4 → 版元ページ

たとえ構造主義の “数学” 的体系が構築できたからと言って, “ソーカル事件” の顛末がひっくり返るわけではないでしょう.

『イシスのヴェール:自然概念の歴史をめぐるエッセー』

ピエール・アド[小黒和子訳]
(2020年1月27日刊行,法政大学出版局[叢書・ウニベルシタス 1109],東京, xx+383+89 pp., 本体価格5,000円, ISBN:978-4-588-01109-2版元ページ

第VI部「オルフェウス的態度──言論、詩、芸術による秘密の発見」(pp. 179-269)あたりがワタクシ的には興味を惹く.

『最期の言葉の村へ:消滅危機言語タヤップを話す人々との30年』

ドン・クリック[上京恵訳]
(2020年1月25日刊行,原書房,東京, 329 pp., 本体価格2,700円, ISBN: 978-4-562-05720-7 → 版元ページ

絶滅言語の最期の姿は20年ほど前に読んだ:ダニエル・ネトル,スザンヌ・ロメイン[島村宣男訳]『消えゆく言語たち:失われることば,失われる世界』(2001年5月29日刊行,新曜社,東京,xii+330+38 pp., ISBN:4-7885-0763-3書評・目次)にも活写されていた.

『社会はどう進化するのか:進化生物学が拓く新しい世界観』

デイヴィッド・スローン・ウィルソン[高橋洋訳]
(2020年1月29日刊行,亜紀書房,東京, 326+21 pp., 本体価格2,300円, ISBN: 978-4-7505-1629-5 → 版元ページ

D・S・ウィルソンの一般向け書籍はわりによく翻訳されている.

『青狐の島:世界の果てをめざしたベーリングと史上最大の科学探検隊』感想

ティーブン・R・バウン[小林政子訳]
(2020年1月24日刊行,国書刊行会,東京, 291 pp., 本体価格3,200円, ISBN:978-4-336-06386-1目次版元ページ

さて,本書の主人公っていったい誰だろうか? 歴史と地名に名を残したヴィトゥス・ベーリング? そうではない? 確かに,18世紀前半にサンクトペテルブルクの威光のもとに莫大な資金と膨大な人力を投入して北太平洋探検隊を編成したのはベーリングの功績かもしれない.しかし,探検踏査中はベーリングはほとんど病床に臥せっていたみたいで,本文中でも影がどんどん薄くなっていく.ベーリングに代わって存在感をしだいに増していくのは,第二次カムチャツカ探検に同行した博物学者・医者のゲオルク・シュテラー —— 絶滅したステラーカイギュウの発見者.本書の後半ではこのシュテラーがベーリング亡き後の探検隊のロシア生還に大きな役割を果たすことになる.主役級の大活躍.さらにいえば,本書全体を通じて暗躍する “闇の主役” がいる.それは「壊血病」だ.船上の探検隊員の命を奪った元凶は壊血病に罹ったこと.シュテラーは博物学者として壊血病に効くフレッシュな薬草あるいは肉の摂取を隊員たちにアドバイスしたとのこと.シュテラーと壊血病の一騎打ち本かも.

『マツタケ:不確定な時代を生きる術』読売新聞書評

アナ・チン[赤嶺淳訳]
(2019年9月17日刊行,みすず書房,東京, xiv+441+xxiv pp., 本体価格4,500円, ISBN:978-4-622-08831-8目次版元ページ).

読売新聞大評が公開されました:三中信宏変幻自在のネットワーク —— マツタケ 不確定な時代を生きる術 アナ・チン著」(2020年2月2日掲載|2020年2月10日公開)



変幻自在のネットワーク

 『マツタケ』というメインタイトルと『南方熊楠菌類図譜』風のカバージャケット図柄だけを見て手に取った読者の多くはきっと面食らうだろう。本書は一言でいえば「マツタケを主題とする文化人類学的変奏曲集」だ。ライトモティーフとしての“マツタケ”はさまざまな姿かたちをとって変幻自在の演技を見せる。予定調和的な筋書きや結末はいっさいなく、読み手のバックグラウンドによって読後感が大きく異なるかもしれない不思議な本だ。

 この本に登場する“マツタケ”は、単に生きものとしての菌類というだけではなく、直喩・隠喩・換喩などさまざまなレトリックを通じてひとつの概念ネットワークを形成している。本書で主役を張る“マツタケ”の姿形のとらえどころの「なさ」はあえて著者が狙ってきたものだと気づくまでには時間がかかった。

 著者が主宰する「マツタケ世界研究会」によるオレゴンアメリカ)、フィンランド雲南(中国)、そして日本での具体的研究を踏まえ、“マツタケ”が出現する場はつねに“周縁的”であると著者は言う。現代資本主義による環境の破壊と収奪がもたらす不安定かつ不確定な「スケーラブル(規格不変)ではない」周縁的環境はむしろ未来へと広がる可能性を孕んでいると著者は主張する。スケーラブルではない不確定性は、多くの生きもの(ヒトも必然的にそこに組み込まれる)の群集から成る生態系ネットワークの特性だろう。人為が加わる不安定な生態系の実例として、現代日本マツタケ狩りと里山保全活動が詳細に論じられている。

 “マツタケ”から大きく広がるネットワークは、現代経済・世界地理・国際政治・難民問題・民族差別・分子系統・菌類分類・保全生態・森林政策など想像を超える幅広い分野をカバーしている。だから、読者の関心がどれほど多様であっても、おもしろく感じる章がきっとあるだろう。時代は“マツタケ”だ。赤嶺淳訳。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年2月2日掲載|2020年2月10日公開)


『デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳:「深い読み」ができるバイリテラシー脳を育てる』

メアリアン・ウルフ[大田直子訳]
(2020年2月20日刊行,インターシフト,東京, 293 pp., 本体価格2,200円, ISBN:978-4-7726-9567-1版元ページ

『和食の英語表現事典』

亀田尚己・青柳由紀江・John Martin Christiansen|成瀬宇平(編集協力)
(2016年10月10日刊行,丸善出版,東京, xviii+320 pp., 本体価格3,800円, ISBN:978-4-621-30066-4版元ページ

先日高座に上がった下北沢・本屋B&Bには食べものと旅行の本がたくさんあった.とある書棚から呼び止められた1冊がこれ.