『もっと!:愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』

ダニエル・Z・リーバーマン、マイケル・E・ロング[梅田智世訳]
(2020年10月15日刊行,インターシフト,東京, 341 pp., 本体価格2,100円, ISBN:978-4-7726-9570-1版元ページ

『世界のカエル大図鑑』読売新聞書評

ティム・ハリデイ[吉川夏彦・島田知彦・江頭幸士郎監修|倉橋俊介・坂東智子・日野栄仁・世波貴子訳]
(2020年9月25日刊行,柏書房,東京, 656 pp., 本体価格10,000円, ISBN:978-4-7601-5235-3版元ページ

読売新聞小評が公開された:三中信宏世界のカエル大図鑑 ティム・ハリデイ著」(2020年10月11日掲載|2020年10月19日公開).



 全世界の代表的なカエル600種を集めた大図鑑。みごとなカラー写真の数々と解説文はカエルに対する先入観を打ち砕くのに十分だ。

 日本産の多くのカエルは地味で目立たない保護色だ。しかし、南米産のヤドクガエル類は致死的な強い毒素を誇示する赤青黄の派手な警告色模様をひけらかす。体長わずか1センチにも満たないガーディナーセーシェルガエルもいれば、30センチ超で体重3キロもある巨大なゴライアスガエルもいる。フウハヤセガエルは超音波を発してメスを惹きつけ、ボールガエルは“ティンパニ”のように轟く鳴き声を発し、ヒラバチガエルの鼻にかかった「アンッ」というあやしい声とよりどりみどり。

 たとえ過酷な環境にあっても生物はひたすら生き延びるすべを探し出す。カエルの多様性はその帰結である。葉の付け根に溜まったわずかな水の中で一生を過ごしたり、よりによって水とは縁遠い乾ききった砂漠の砂の中で暮らすカエルもいる。しかし、環境破壊とツボカビ症の猛威は多くのカエルを窮地に追い込んでいる。倉橋俊介・坂東智子・日野栄仁・世波貴子訳。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年10月11日掲載|2020年10月19日公開)



全世界のカエル600種のカラー図鑑.徹底的にカエルだらけ.いやが上にも目立ちまくるヤドクガエル類はまあいいとして,「おい,その表現型はもうちょっと何とかならんかったんか?」とレフリーコメントを付けたくなるカエルさんも.それにしてもカラー図版がみごと.この仕上がりで1万円という価格設定は良心的すぎるとワタクシは感じた.

『吸血昆虫ブユの不思議な世界:謎めいた新種の発見と新興寄生虫感染症の解明』

高岡宏行
(2020年9月30日刊行,明石書店,東京, 219 + ix pp., 本体価格2,700円, ISBN:978-4-7503-5063-9版元ページ

昆虫分類学者の自伝的読み物.分類の好きな人,ぜひどーぞ.

『図解き 論理的哲学史逍遙:ポルフィリオスの樹にはじまる』

山下正男
(2020年9月10日刊行,工作舎,東京, 236 pp., 本体価格2,400円, ISBN:978-4-87502-520-7版元ページ

届くまでずっと身構えていたのだが,予想していたよりも内容がゆうゆうと “逍遥” していたのでホッとした.

『わさびの日本史』読売新聞書評

山根京子
(2020年8月20日刊行,文一総合出版,東京, viii+240+32 pp., 本体価格2,500円, ISBN:978-4-8299-7233-5版元ページ

読売新聞小評が公開された:三中信宏わさびの日本史 山根京子著」(2020年10月4日掲載|2020年10月13日公開):



 世の中には唐辛子を論じた本はたくさんあるのに、同じく“辛さ”を身上とするわさびの本がほとんどないのは不公平きわまりない。

 わさび色のカバーにくるまれた本書は、この食用植物の進化の分子系統学的な解明を目指す。謎が謎を呼ぶ絶妙なストーリー展開に引き込まれながら、わさびの食文化を探るべく古文書群(献立表や茶会記など)を徹底的に渉猟する著者の研究者らしい“しつこさ”に共感を覚える。

 DNA塩基配列データによれば、わさび祖先集団が中国大陸から日本に入ってきたのは百万年前のことだという。江戸時代はじめには静岡の安倍川上流の有東木で栽培されていたが、その後、伊豆半島天城山麓などでも大規模に栽培されるようになった。

 わさびをめぐる生物学と文化史との絶妙な絡み合いはとてもおいしい。本書は、長い年月をかけて人知れず育種され、いつしか日本料理の膳の片隅に必ず乗るようになったわさびの民俗植物学と食文化史学の基礎資料として価値があるだろう。とりわけ詳細な巻末のわさび年表には圧倒される。わさびよ永遠なれ。(文一総合出版、2500円)

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年10月4日掲載|2020年10月13日公開)