『昆虫食と文明 昆虫の新たな役割を考える』目次

デイビッド・ウォルトナー=テーブズ[片岡夏実訳]
(2019年7月11日刊行,築地書館,東京, 366 pp., 本体価格2,700円, ISBN:9784806715856版元ページ

目次を見るかぎり,本書は「昆虫食」よりももっと広い「昆虫学」そのものについての一般書かな.


【目次】
序章 昆虫食に何ができる?―CRICKET TO RIDE 8

第1部 MEET THE BEETLES!―昆虫食へようこそ

第1章 昆虫を名づける―I CALL YOUR NAME 24
第2章 数の問題―HERE, THERE, AND EVERYWHERE 40
第3章 栄養源としての昆虫の可能性―SHE SOMETIMES GIVES ME HER PROTEIN 49
第4章 昆虫養殖と環境への影響―OB-LA-DI, OB-LA-DA 62

第2部 YESTERDAY AND TODAY―昆虫と現代世界の起源

第5章 昆虫はいかにして生まれたか―I AM THE COCKROACH 74
第6章 昆虫と人類の共進化をたどる―WILD HONEY PIE 85
第7章 昆虫はいかにして世界を支えてきたか―MAGICAL MYSTERY TOUR 99

第3部 I ONCE HAD A BUG―人間はいかに昆虫を創造したか

第8章 破壊者としての昆虫―I' M CHEWING THROUGH YOU 128
第9章 昆虫との戦いとその結果―RUN FOR YOUR LIFE 149

第4部 BLACK FLY SINGING―昆虫の新たな概念を構築する

第10章 創造者としての昆虫―MOTHER MARY COMES TO ME 162
第11章 昆虫利用の新時代―CAN'T BUY ME BUGS 176

第5部 GOT TO GET YOU INTO MY LIFE―食料としての昆虫の可能性

第12章 過渡期にある非西洋文化の昆虫食―LEAVING THE WEST BEHIND? 192
第13章 周縁からの新たな料理法―SHE CAME IN THROUGH THE KITCHEN WINDOW 219
第14章 飼料としての昆虫生産―SHE CAME IN THROUGH THE CHICKEN WINDOW 235
第15章 メニューに載った昆虫たち―A COOK WITH KALEIDOSCOPE EYES 245

第6部 REVOLUTION 1―昆虫を食べるために考えること

第16章 倫理と昆虫と人間の責任―IT' S SO HARD (LOVING YOU) 260
第17章 昆虫食の安全対策―A LITTLE HELP 286
第18章 ヒトと昆虫との契約を再交渉する―ALL YOU NEED IS LOVE? 302
第19章 昆虫食はどこへ行く?―WE WERE TALKING 318

第7部 REVOLUTION 9―昆虫食の哲学

第20章 昆虫と昆虫食と人生の意味―IMAGINE 326

 

訳者あとがき 342
写真クレジット [345]
原註 [353-346]
文献目録(抜粋) [361-354] Cf: A Complete List of References [pdf]
索引 [366-362]

『モービー・ダック』読了

ドノヴァン・ホーン[村上光彦・横濱一樹訳]
(2019年7月15日刊行,こぶし書房,東京, 654 pp., 本体価格2,800円, ISBN:9784875593515目次版元ページ

全650ページ読破.これはいったいどのジャンルに配架されるべき本なのか.広義の海洋科学で,地球規模の海流・漂流デブリス問題・微細プラスチック汚染.海洋自然保護あたりが妥当かな.しかし,原書:Donovan Hohn『Moby-Duck: The True Story of 28,800 Bath Toys Lost at Sea and of the Beachcombers, Oceanographers, Environmentalists and Fools Including the Author Who Went in Search of Them』(2011年刊行, Viking Press, New York, ISBN:9780670022199版元ページ著者サイト) のいささか饒舌すぎるタイトルを見れば, “知的ごった煮” の波間に見え隠れするビーチコーミング・中国玩具製造・海難事故・北極探検まで含めて,もっと広大なテーマを包括する本でもある.

『書店本事:台湾書店主43のストーリー』目次

郭怡青(文)・欣蒂小姐(絵)・侯季然(映像)[小島あつ子・黒木夏兒訳]
(2019年6月27日刊行,サウザンブックス,東京, 432 pp., 本体価格2,600円, ISBN:9784909125125版元ページ映像リスト《書店裡的影像詩Ⅰ-日文字幕版》 [YouTube])

掛け値なしにおもしろい.台湾の独立系書店がいきいきと描かれている.しかも,各書店ごとにQRコードで映像作品《書店裡的影像詩Ⅰ-日文字幕版》へのリンクがはられている.ほぼ同時に出た:ホルヘ・カリオン[野中邦子訳]『世界の書店を旅する』(2019年6月20日刊行,白水社,東京, 309+31 pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784560096932目次版元ページ)が世界本屋旅行なら,『書店本事』は台湾本屋旅行のガイドブック.


【目次】

Section 1 老舗の書店 —— 時間は滔々と流れる長い河、悠久の時を経ても衰えることはない 7

舊香居〔台北〕 ––– 時空を超えた蔵書の世界 8
古今書廊〔台北〕 ––– 「古」にも「今」にも造詣ある書店 17
人文書舍〔台北〕 ––– 台湾近代史を見守る時空回廊 27
唐山書店〔台北〕 ––– 地下に隠れた知識の宝庫 37
金萬字二手書店〔台南〕 ––– 台南で一番古い古書店 48
女書店〔台北〕 ––– 婦人解放運動の聖火リレー 58
茉莉二手書店〔台北〕 ––– 「環境保護」「公益」「読書」を推進するチェーン系古書店 67
南天書局〔台北〕 ––– 台湾「文史」の記録者たる書店 77
水準書局〔台北〕 ––– おしゃべりをこよなく愛する書店 85

Section 2 経験を積んだ書店 —— 一日、また一日と過ぎゆく読書時間の中で、理想がかたちになっていく 97

好樣本事〔台北〕 ––– 地球で最も美しい読書空間 98
有河book〔新北〕※閉店 ––– 詩の書かれたガラスと川岸が言葉を交わし合う姿を眺められる書店 107
小小書房〔新北〕 ––– 自分のやりたいことにこだわる、ご町内の書店 118
阿福的書店〔新北〕 ––– 子供たちのためのおはなし屋さん 128
九份樂伯二手書店〔九份〕 ––– 神隠し山の古書店 137
草祭二手書店〔台南〕※閉店 ––– 本のための空間を、断固として維持する。 147
府城舊冊店〔台南〕 ––– 台湾文学と古書文化の推奨者 156
舊書舖子〔花蓮〕 ––– 眠れる古書を呼び覚まし、彼らのために第二の春を 165
時光二手書店〔花蓮〕 ––– 猫と犬と本の香り 173
魚麗人文主題書店〔台中〕 ––– 魂のバンケット 182
午後書房二手書店〔台中〕 ––– たった一人で営む書店 194
洪雅書房〔嘉義〕 ––– 社会運動のプラットフォーム 202
阿維的書店〔台北〕 ––– 台湾版パヴァロッティの夢のプラットフォーム 211
春成書店〔恆春〕※閉店 ––– 台湾の端・古都恆春の書店 222

Section 3 新しい書店 —— 飛び立ったばかりの夢を、今ここに記す 231

永楽座〔台北〕 ––– 台湾文化の理解のための文化サロン 232
荒野夢二〔桃園〕 ––– 街角に佇む、日々に欠かせぬお惣菜のような書店 244
伊聖詩私房書櫃〔台北〕 ––– 共に美しい地球を目指す書店 253
小間書菜〔宜蘭〕 ––– 田舎の書“田” 264
晴耕雨讀小書院〔桃園〕 ––– 田んぼに漂う魅惑の書香 274
舊書櫃〔宜蘭〕 ––– 古い倉庫に漂う本の香り 282
三餘書店〔高雄〕 ––– ご当地高雄の民間パワーによる文芸サロン 290
晃晃二手書店〔台東〕 ––– バックパッカーの心の補給所 300
Zeelandia Travel & Books〔台北〕 ––– 旅行者たちの文化ステーション 310
新手書店〔台中〕 ––– 身勝手な書店 320
Bookstore 1920s〔台北〕 ––– 大稻埕のかつての賑わいを甦らせる書店 330
瓦當人文書屋〔新竹〕 ––– 夢にまで見た文学の書斎 338
蕃藝書屋〔屏東〕 ––– 村のために火を灯し、希望の種を植え付けよう 346
虎尾厝沙龍〔雲林〕 ––– 古民家の中の文化サロン 355
南崁1567小書店〔桃園〕 ––– 桃園の小さな文化村 363
書酷英文書店〔新竹〕 ––– 英語の本を読む環境をシェアする村 372
恋風草青少年書房〔台中〕 ––– 十代の成長に寄り添う読書空間 381

Section 4 蔵書豊富な書店以外の店−−「読書」、売り〼 391

「古殿樂藏」唱片藝術研究中心暨「古殿樂藏」〔台北〕 ––– 歴史の声に耳を貸せ 392
書店喫茶一二三亭〔高雄〕 ––– 哈瑪星(ハマセン)の古民家を救う書籍喫茶 403
Room A〔台南〕 ––– 読書空間、時間貸しします 413


 取材あとがき 書店というピースが形作るパズル、台湾[郭怡青] 421
 挿絵あとがき ストーリーを持つ人とその書店[欣蒂小姐] 428
 訳者あとがき 『書店本事』と私の記憶[黒木夏兒] 430
 訳者あとがき すべては縁でつながっている[小島あつ子] 431

『書物の愉しみ:井波律子書評集』

井波律子
(2019年6月18日刊行,岩波書店,東京, xiv+521+18 pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784000613453版元ページ

30年に及ぶ書評集.著者が専門とする中国の古典や史書・伝記・小説に関する書評はとりわけ読み応えがある.さすがさすが.書評のあり方を自分なりに考えることができる.

『書物の破壊の世界史:シュメールの粘土板からデジタル時代まで』読売新聞書評

フェルナンド・バエス[八重樫克彦・八重樫由貴子訳]
(2019年3月22日刊行,紀伊國屋書店,東京, 739 pp., 本体価格3,500円, ISBN:9784314011662目次版元ページ

読売新聞大評が一般公開された:「古今東西 書物受難史——書物の破壊の世界史…フェルナンド・バエス著」(2019年6月30日)



古今東西 書物受難史

 私のいる研究室には古書がうずたかく積み上がっていて、ときどき銀色に輝く紙魚がちょろちょろ這い出てくる。本の紙や糊をかじってしまう憎らしい天敵だ。しかし、本書を読んだあとでは、紙魚の1匹や2匹くらいは寛大に見逃したくなる。

 書物の受難はいつの時代にも世界中どこでも絶えることはなかった。伝説的な古代エジプトアレクサンドリア図書館は最盛期の紀元前3~2世紀には70万巻ものパピルス文書が所蔵されていたという。しかし、その後に続く政治的混乱と戦火によりこれらの書物はことごとく灰燼に帰した。第2次世界大戦中のナチスドイツによる大規模な焚書事件(「ビブリオコースト」)、中国の文化大革命時の書物の検閲と弾圧、ユーゴスラビア紛争における図書館の大規模な被災と何百万冊もの破壊、今世紀に入ってもイラクにおける激しい戦闘の中で粘土板に刻まれた数多くの貴重な歴史的文書が失われた。

 私たちの愛読書がもし傷つけられたり燃やされたりすれば“痛み”を感じるだろう。しかし、長い歴史の中で暴力的に失われてしまった物理的存在としての書物の総数はその痛覚を麻痺させてしまう。本書に詰め込まれた書物受難史の事例は繰り返し読者に問いかける。なぜわれわれ人間はこれほどまで執拗に本を燃やしたり捨てたりできたのだろうか。かつて作家ハインリッヒ・ハイネは「本を燃やす人間は、やがて人間も燃やすようになる」と書いた。多くの日本人読者はすぐさま「焚書坑儒」という中国の史実を思い出すはずだ。書物の破壊の歴史は人間社会の憎悪の歴史と表裏一体だった。

 ノーベル文学賞詩人ヨシフ・ブロツキーは母国ロシアで執筆活動を弾圧されたが、それでも「本を燃やすよりもひどいことがあるとすれば、それは読まないことだ」と述べた。焚書や破壊や廃棄という災厄を免れて生き残った書物を手にするわれわれは本を読めることの幸運を実感する。八重樫克彦・八重樫由貴子訳。

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2019年6月30日掲載|2019年7月8日公開)