『標本バカ』読売新聞書評

川田伸一郎(著)・浅野文彦(絵)
(2020年10月8日刊行,ブックマン社,東京, 335 pp., 本体価格2,600円, ISBN: 978-4-89308-934-2 → 版元ページ

読売新聞小評が公開された:三中信宏標本バカ 川田伸一郎著」(2020年11月15日掲載|2020年11月24日公開)



 博物館に陳列されているさまざまな動物の剥製標本は来館者の好奇心をふくらませ想像力をかきたてる。野生では絶滅してしまった動物の剥製もある。しかし、いずれもきれいに整形された標本は展示室の中でまるで生きているかのような独特の存在感を放って動き回る。それらの標本は展示だけでなく科学研究の基礎データとしても貴重だ。

 本書は国立科学博物館研究主幹の著者が雑誌『ソトコト』に長期連載してきたコラムの単行本化だ。著者はもともとモグラの研究者だが、キリンやクジラまでありとあらゆる動物の標本づくりに国内を東奔西走する。各コラム冒頭を飾るユーモラスなイラストとともに語られるバックヤードでの奮闘エピソードの数々は一気読みまちがいなしだ。

 標本づくりは熟達した“匠”の技の賜物である。死体につきものの“腐敗”という無慈悲な運命のもと、手際よく皮をはいで解体し、余分な肉をそぎ取り、いったん土に埋めて微生物などに分解させ、最後に残った骨格を標本にする。こんな仕事は確かに“標本バカ”でなければ続かないにちがいない。(ブックマン社、2600円)

三中信宏[進化生物学者]読売新聞書評(2020年11月15日掲載|2020年11月24日公開)



標本づくりに東奔西走するモグラの先生が描く博物館バックヤード逸話の単行本化.イラストが微笑ましい.〈ソトコト〉誌での連載が今も続いているので,続刊もありなんじゃないでしょうか.標本づくりは話のネタとしてはとてもおもしろい.某大学の理学部2号館屋上で動物のご遺体を “風葬” していたところ,カラスだか猛禽だかがホネをかっさらって,隣接する北白川の住宅街の路上に放り投げたため,警察が出動したのしないのというお話を某名誉教授からうかがったことがありますな.それとは別に,カバだかサイだかの巨大なご遺体を犬山城下のおサルの楽園に運び込んで一悶着あったという話を某遺体科学のセンセイに本郷でうかがったこともありますな.

『活動写真弁史:映画に魂を吹き込む人びと』

片岡一郎
(2020年10月30日刊行,共和国,東京, 573 pp., 本体価格6,600円, ISBN: 978-4-907986-64-3 → 版元ドットコム

共和国の本が新刊台にあると “引き寄せ” が作用するのか.かつてのサイレント映画活動弁士を総覧する600ページ.

『肥満男子の身体表象:アウグスティヌスからベーブ・ルースまで』

サンダー・L・ギルマン[小川公代・小澤央]
(2020年9月30日刊行,法政大学出版局,東京, xii+334+20 pp., 本体価格3,800円, ISBN:978-4-588-01122-1版元ページ

大手町魚市場に並んでいた中からいきなり声がかかった “ファットボーイ” 論.