斎藤昌三
(1998年8月10日刊行,平凡社[東洋文庫639], ISBN:4582806392)
最初の「東路:温故随録」を読了.200ページあまり.さまざまな雑誌の出自と変遷,消滅をたどる.『中央公論』がもともと仏教系断酒運動の『反省会雑誌』だったと書かれているが,別の本で読んだ気がする(あ,永嶺本だった) 国書刊行会は吉川弘文館から budding したそうな.裳華房は仙台で江戸時代から200年も続いた書肆だったとのこと.へぇ,ほー.口絵のモノクロ書影は八木福次郎による伝記のカラー図版で確認すること.
本の装幀は書かれた内容の自然な“延長”とみなされるべきだという主張が繰り返される.いたずらに豪華な造本,あるいは内容に比して質素過ぎる製本はことごとく拒絶するのが著者のスタンスなのだろう.
吉野作造を囲む会が向ヶ丘の〈呑喜〉で定期的に開催されていたという話は楽しい.名物の茶粥は当時からあったそうな.吉野の葬式では〈呑喜〉から花輪が届けられたとか.ほかにも金尾文淵堂のこととか.この版元については,すでに伝記が出ている:石塚純一『金尾文淵堂をめぐる人びと』(2005年2月28日刊行,新宿書房, ISBN:488008333X→書評).斎藤昌三は金尾文淵堂の盛衰を同じサイドで見ている.