『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』

Olaf Breidbach

(2006年8月刊行,Prestel, München, 304 pp., ISBN:3791336630目次



年のはじめのヘッケル読み —— 『タイムズ世界地図』みたいな大判の本だが,正月三ヶ日用の本として持ち帰ってきた.昨年は序章だけ読んだのだが,続く部分には未発表の手稿とかスケッチが載っていて,ページをめくるたびにとても惹かれるものがある.とりわけ,当時のドイツで「自然画(Naturbilder)」が「自然装飾(Naturdekor)」と同一視されていたことを考えるとき,「自然画家」としてのヘッケルの影響力は多方面にわたって甚大だったと著者は指摘する.しかし,当時の社会の中で嗜好されたのはヘッケルの自然画だけではなかった.彼に先立つローレンツオーケンや彼と同時代のマティアス・シュライデン(細胞説の提唱者)が公刊した博物図譜もまた広く受け入れられたという.しかし,ヘッケルの衝撃ははるかに大きく,それを彼の一連の著作の「自然画」をたどることで解明しようというのがこの本の目的だ.これはこれでもう十分に満腹です.