[目]『The Metaphysical Club: A Story of Ideas in America』

Louis Menand

(2001年5月刊行,Farrar, Straus and Giroux, New York, xii+546 pp., ISBN:0374199639 [hbk] / ISBN:0374528497 [pbk] → 版元ページ

本書は,今から10年前,アメリカのオレゴン州立大学(Corvallis)に行ったときに,街中の本屋の新刊コーナーでたまたま手にとった.以下はそのときのメモ:

実にアメリカらしいこんな本がダウンタウンの The Book Bin に平積みになっていました.



形而上学」(metaphysics)を論じ合った同時代の集まりとしては,19世紀ロンドンの形而上学協会(the Metaphysical Society)が思い出されます.Thomas Henry Huxley が不可知論をぶち上げた場として知られるこの集会は,進化と宗教とのせめぎあいの場として機能しました.(デズモンド&ムーア『ダーウィン工作舎の下巻,p.811を参照のこと)



一方,本書が掘り起こそうとするのは,19〜20世紀初頭のアメリカに影響を残した「形而上学クラブ」(1872年創立)です.この「クラブ」は,プラグマティズムを育んだ母体となった集団として知られており,Charles Saunders Peirce, William James, John Dewey など当時のアメリカのメジャーな知識人たちが絡んでいます.



形而上学クラブそのものは1年たらずの期間しか存続せず,その記録もほとんど残ってはいないとのこと.本書では残された数少ない資料を掘り起こし,この集団の実像を明らかにしようとしています.



本書では,アメリカでの反ダーウィニズムの旗頭だった Louis Agassiz の関わり合いをはじめ,遠くイギリスの Charles Darwin や T. H. Huxley からの波及効果についても随所で取り上げられています.



(2001年9月4日)

本書は翌2002年度のピューリッツァー賞(歴史部門)を獲得した.その後,ずっと本棚の一角にカバージャケットの星条旗がはためいていたのだが,予期しないことにこの大著は出版十年目にして日本語訳され,2011年8月にみすず書房から刊行された:ルイ・メナンド[野口良平那須耕介・石井素子訳]『メタフィジカル・クラブ:米国100年の精神史』(2011年8月19日刊行,みすず書房,東京,本体価格6,000円,ISBN:9784622076100版元ページ).

【目次】
Preface ix

Part 1

1. The politics of slavery 3
2. The abolitionist 23
3. The wilderness and after 49

Part 2

4. The man of two minds 73
5. Agassiz 97
6. Brazil 117

Part 3

7. The Peirces 151
8. The law of errors 177
9. The metaphysical club 201

Part 4

10. Burlington 235
11. Baltimore 255
12. Chicago 285

Part 5

13. Pragmatisms 337
14. Pluralisms 377
15. Freedoms 409


Epilogue 435
Acknowledgements 443
Notes 447
Works Cited 499
Index 521