『英国アール・ヌーヴォー・ブック:その書物デザインとイラストレーション』

ジョン・ラッセル・テイラー

(1993年4月5日刊行,晶文社ISBN:4772003754



19世紀〜20世紀の〈アーツ・アンド・クラフツ〉運動とそれに続く〈アール・ヌーヴォー〉運動との複雑な関わり合いが論じられている.ケルムスコット・プレスの本は“芸術品”として鑑賞する分にはいいが,手に取って読む本ではないと著者は言う.なるほどね.〈一八九〇年代のアール・ヌーヴォー〉の章を読み進む.100ページほど.装幀家チャールズ・リケッツは初めて聞く名前.やっぱり,オーブリー・ビアズリーかな.怪奇な図柄.

続く〈一九〇〇年代のアール・ヌーボー〉と残りの部分を読む.これで読了.訳者解説がとても情報的だ.アーツ・アンド・クラフツ運動とアール・ヌーボー運動とは「近親憎悪的な複雑な関係」があると指摘する(p. 280).アーツ・アンド・クラフツでは“隙間”をたとえば唐草模様で埋め尽くすという「空間恐怖」の傾向があったのに対し,英国のアール・ヌーボーでは逆にシンプルさを基調とする「空間愛」を特徴とするという(p. 283).なるほどね.

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『エリック・サティ覚え書』

秋山邦晴

(2005年11月20日刊行[初版1990年6月],青土社ISBN:4791762142



昨年暮れに復刊された.秋山邦晴のことはこれまでほとんど知らなかったのだが,数年前に武満徹全集に関わった関係で,1950年代の〈実験工房〉の同人のひとりとしてその名前を知るようになった.上記サティ本は550ページを越える力作だ(青土社,えらいっ).イラストいっぱい.文字もいっぱい.

この本をぱらぱらめくりつつ,高橋悠治の弾く〈ジムノペディ〉を聴いていると(DENON COCO-70702),まさに高橋アキつながりということで.