「ウェルドン&ウェズリー古書店」後日譚

博物学古書店としての164年の歴史を閉じた Wheldon & Wesley 書店の在庫についての後日譚が,まったく予期せず TaxaCom に配信された.廃業後の同書店の在庫は,オランダの古書店Hermann L. Strack〉によって,昨年,ウェールズの「古書王国」として有名な Hay-on-Wye のある倉庫に眠っているのが“再発見”された.そのときの記録が同書店のウェブに公開されている(→「10 DECEMBER 2005 - WHELDON & WESLEY....... THE FINAL CHAPTER」).



写真を見るかぎり相当な量の在庫がまだあるようだが,保管状況はけっしてよくない.黴びたり崩れたりしはじめている古書も少なくないように見える.それでも200箱余りの本は商品価値があったとのこと.引き取られた在庫は Hermann L. Strack 書店によって目録がつくられているらしい.



Wheldon & Wesley 書店の廃業の顛末は,2004年に当時の経営者から全顧客宛に送られてきた一連のメールで知ることができる.私信なのでここに書くわけにはいかないが(とはいえ,すでに本人がウェブ公開[リンク切れ※8 June 2013]している部分もあるが),家庭の事情により書店を閉じ仏教に改宗したとのこと.幸せなエンディングとはとてもいえなかった.在庫はすべてロンドンの別の古書店に売却されたそうで,今回ヘイ・オン・ワイで“再発見”されたのはそれだろうと推測されている.



ぼくは学生の頃から Wheldon & Wesley 書店をよく利用していた.いまのようにインターネット書店がなかった頃だったので,W-W 社から在庫カタログが郵送されてくるのが楽しみだった.Leon Croizat の汎生物地理学の大部な自家出版本(1958, 1961, 1964)がすべて入手できたのは,ひとえにこの書店のおかげだ.※それらはいまではきっと入手困難な稀覯本になっているだろう.