『江戸俳画紀行:蕪村の花見,一茶の正月』

磯辺勝

(2008年1月25日刊行,中央公論新社中公新書1929],本体価格860円,カラー口絵 4 plates + viii + 274 pp., ISBN:9784121019295版元ページ



江戸時代の代表的な俳人22人をとりあげ,その俳句に添えられた俳画を論じた本.カラー口絵といい,本文中に挿入されたモノクロの絵といい,そこはかとなく“脱力系”な絵柄が多い.

本書に登場する俳人は,松尾芭蕉井原西鶴与謝蕪村山東京伝宝井其角小林一茶ら.ぜんぜん知らない名前も多い.松尾芭蕉俳画がとても堅苦しいぞ.一方,松岡青蘿が描く〈のらねこ〉の構図はふっと力が抜けてよろし.やはり蕪村は俳句でも俳画でも他とは別格の突き抜けた俳人だったか.小林一茶はまあおいといて,釣瓶取られた千代尼と大江戸のアイドル山東京伝が人物としておもしろいかもしれない.江戸の宅急便業界で成功した大伴大江丸は名前からして豪快そう.横井也有は松田忠徳『江戸の温泉学』(2007年5月25日刊行,新潮社[新潮選書],255 pp.,税込価格1,260円,ISBN:9784106035791目次版元ページ)にも登場する.

それにしても,「俳味」とはいったい何なんでしょ.そのあたりの感覚はようわかりませんな.通読すると,人生の余計な力みが抜けていく.




【目次】
カラー口絵 4 plates
はじめに i
横井也有 —— 楽しき隠居暮らし 3
井原西鶴 —— 月夜をゆく男 13
建部涼袋 —— 軽すぎる風の袋 25
松岡青蘿 —— サンボリズム宣言 37
常世田長翠 —— 酒田居よいが 47
藤森素檗 —— 油を売る主人 59
大伴大江丸 —— 俳界の飛脚 69
松尾芭蕉 —— 馬上の芭蕉 81
松窓乙二 —— 蝦夷へ飛ぶ密使 91
三浦樗良 —— 追われた嘉助 101
与謝蕪村 —— 天明くしゃみ先生 113
室井其角 —— 乞食三蔵の手紙 125
小林一茶 —— おらが俳諧 139
千代尼 —— 不思議の名人 149
井上士朗 —— 名古屋紳士の顔 161
野々口立圃 —— おとぎばなし 173
田上菊舎 —— 生涯行脚の女 187
建部巣兆 —— 市井の細道 199
高井几薫 —— 驚けや驚くな 209
山東京伝 —— 人気作家の机 223
志太野坡 —— オランダ帽子 235
三上千那・三上角上 —— 堅田の落書き 249
あとがき 262
参考文献 265