『Stephen Jay Gould: Reflections on His View of Life』

Warren D. Allmon, Patricia Kelley, and Robert Ross (eds.)

(2008年11月6日刊行,Oxford University Press, xiv+400 pp., ISBN:9780195373202 [hbk] → 版元ページ

あのグールドもついに「評伝」の対象となってしまったか —— ビッグネームが逝去すると,いかにも待っていたかのように伝記的な記事や著作が出版される(「X-day」に備えて事前に密かに準備を進めておくことは大切だが).進化学者もその例外ではない.2005年に亡くなった故 Ernst Mayr もすでに大きな伝記(Jürgen Haffer『Ornithology, Evolution, and Philosophy : The Life and Science of Ernst Mayr 1904-2005』2007年刊行, Springer-VerlagISBN:9783540717775 [hbk] / ISBN:9783540717782 [pbk] → 目次|版元ページ:hbk / pbk)が出ている.
今回の新刊は Mayr に先立つ2002年に逝去した Stephen Jay Gould に関する論文集だ:Warren D. Allmon, Patricia Kelley, and Robert Ross (eds.)『Stephen Jay Gould: Reflections on His View of Life』(2008年11月6日刊行,Oxford University Press, xiv+400 pp., ISBN:9780195373202 [hbk] → 版元ページ).Richard Lewontin や Richard Levins らかつての「同志」たちを含む十数名による寄稿が含まれていて,最後にグールド著作目録が40ページあまり付けられている.
—— かつて,博士課程に入ったころ,彼のエッセイ集:スティーヴン・ジェイ・グールド[渡辺政隆三中信宏訳]『ニワトリの歯:進化論の新地平(上・下)』(1988年10月刊行,早川書房ISBN:415203372X [上] / ISBN:4152033738 [下])を翻訳する機会を得た(ほんとうは樋口広芳さんが訳者トップにくるはずだった).四半世紀前の当時,飛ぶ鳥を落とし地を這う貝を舞わせるだけの馬力があった著者が後に病に斃れるとは想像すらできなかった.彼のエッセイはどれも翻訳に手こずったが,要するに出だしの衒学的なパラグラフは目を閉じて通り過ぎればいいのだということがそのうちわかるようになった.でもって,一通り最後まで終えてから,おもむろに冒頭パラグラフに戻ると「なるほどそういうことか」とうなずける趣向が凝らされていることがわかる.