『酒』

吉田元

(2015年8月10日刊行,法政大学出版局ものと人間の文化史 172],東京,3 color plates + vi +251 pp., ISBN:9784588217210目次版元ページ

寝酒ならぬ寝読み本.まちがいなく必修科目指定.第1章「はじまりの酒」,第2章「神酒」,そして第3章「古代日本の酒」は半分神話みたいな感じ.しかし,第4章「中世・戦国の酒」になるとがぜんリアルな酒造りと酒飲みの話が展開する.鎌倉時代吉田兼好徒然草』を引用しつつ,著者は「宴会での酒の無理強いや,酔っぱらいの醜態はかなり古くから日本人の習性だったらしい」(p. 90)という.第5章は日本酒造りの技法が確立された江戸時代のこと.関西から関東に「下り酒」として運ばれた日本酒が,江戸では大売れした.第6章は文化文政期の金沢の酒文化,第7章はたびたび飢饉に襲われた東北地方の酒造り.最後の第8章は酒器の話.「酒に燗をするのは,昔は九月九日の重陽節句から三月三日の桃の節句までで,燗をやめることを指す「別火【わかれび】」という言葉もあった」(p. 225)