『ビールと日本人:明治・大正・昭和ビール普及史』

キリンビール(編)

1984年4月30日刊行,三省堂ISBN:4385349118



第1章「日本人のビール初体験」.なかなか興味深い歴史的エピソードがいっぱい.日本語の“ビール”という言葉はオランダ語由来だそうだ.

第2章「文明開化の波に乗って」と第3章「二つの大戦の間」.ビールは昔も今も日本人の嗜好に適合していたのだろう.最初はイギリス風のビールが明治の初期に日本上陸を果たしたが,次第にドイツ風のビールによって排除されていった.ビールの栓が「コルク」から「王冠」に変わったことにより,日本社会への普及に拍車がかかったとのこと.歴史的逸話のひとつとして,乃木希典将軍によるビールの“イッキ飲み儀式”はドイツ直輸入の軍隊文化だったそうだ.

第4章「戦争とビール」,そして最後の第5章「戦後の展開」.戦中戦後にわたってビールの泡沫の向こうに見える世相.とりわけ,明治初年度に日本で醸造されていたビールは,炭酸がいまの1/3程度で,ホップを倍以上も使用する,とても苦い飲み物だったというのは勉強になった.しかも,消費者の手元に届くまでに酸化が相当に進んでしまった“赤いビール”として行き渡っていたそうだ.ほほー.