『失われた時を求めて1 — 第一篇:スワン家の方へ I 』

マルセル・プルースト(鈴木道彦訳)

(2006年3月22日刊行, 集英社集英社文庫へリテージシリーズ], ISBN:4087610209



“ママン”のことはこっちに置いといて,過去をさかのぼる悩みが綴られている.こんなぐあいに:




私たちの過去についても同様だ.過去を思い出そうとつとめるのは無駄骨であり,知性のいっさいの努力は空しい.過去は知性の領域外の,知性の手の届かないところで,たとえば予想もしなかった品物のなかに(この品物の与える感覚のなかに)潜んでいる.私たちが生きているうちにこの品物に出会うか出会わないか,それは偶然によるのである.(pp. 107-108)



このあと,口にした“紅茶に浸したプチット・マドレーヌ”が「私」の過去の記憶を紡ぎだすという有名な場面へとつながっていく.