『中国「女書」探訪』

細見三英子

(2007年8月15日刊行, 新潮社, ISBN:9784103052715目次版元ページ



この本,わざわざハードカバーで出すほどの分量ではない.新書か選書の体裁で十分ではないか.全部で「17章」もあるのに,各章が平均して数ページ〜10ページ程度しかないというのは,構成として奇妙だ.内容はとてもおもしろそう.

前半,中国ディープサウスの調査地にたどりつくまでの紆余曲折がとても長い.肝心の「女書」が初めて紙面に登場するのはやっと「80ページ」になってから.それにしてもこの字は面妖な字体をしているな.文化大革命のときは“妖字”として弾圧されたという.後半部になってやっと,「女書」の発祥地とおぼしき村に入るあたりのルポルタージュは,土の香りが漂う記述になっている.それにしても,現地の写真が一葉でも掲載されていたら,もう少し想像力が膨らむのに.文章が描画的であるだけに,この点は残念だ.著者は「女書」を絶滅危惧少数言語のひとつとして見る視点を最後に読者に示している.

「女書」というのは初めて目にすることばだったが,少し調べてみたら研究サイトがいくつかあって,たとえば〈女書世界(World of Nushu)〉が挙げられる.これまで息長く調べられてきたことを知る.そして,「女書」自体,これからどうなっていくのだろう.