『日本の酒』

坂口謹一郎

(2007年8月17日刊行, 岩波書店岩波文庫 青 33-945-1], ISBN:9784003394519



本厚木への車中で読了.意外な内容.“アル添酒”や“三増酒”,あるいは戦時中の“合成酒”まで含めて,著者に言わせれば,「醸造技術の近代的革新」であるという点で積極的に評価される.もちろん,日本酒のさまざまな蘊蓄はあふれんばかりなのだが,この本の初版が出された「1964年」という時代背景を考えなければならないのだろう.この岩波文庫版の解説:小泉武夫「酒の生き神さま — 坂口謹一郎先生の酒学」の中で,小泉は坂口の“先見の明”を指摘しているが,本書が世に出てからの40年間の「日本酒」をめぐる推移の大きさは確かに特筆されるべきだろう.

なお,故人に絡むエピソードのひとつとして,当時岩波書店にいた編集者・田村義也が坂口私邸の半地下の貯蔵庫から酒をどんどん持ちだしてきたと書いている.田村義也の『のの字ものがたり』(1996年3月25日刊行, 朝日新聞社ISBN:4022567856)や『ゆの字ものがたり』(2007年3月10日刊行,新宿書房ISBN:9784880083650版元ページ)に書かれているように,坂口本の装丁者として知られる田村は公私にわたって関わりがあったということだ.