『The Romantic Conception of Life : Science and Philosophy in the Age of Goethe』

Robert J. Richards

(2002年12月刊行, The University of Chicago Press, Chicago, xx+587 pp.+ 4 color plates, ISBN:0226712109 [hbk] → 目次版元ページ著者ページ

18〜19世紀の〈ロマン主義サイエンス〉をめぐる Robert J. Richards『The Tragic Sense of Life: Ernst Haeckel and the Struggle over Evolutionary Thought』(2008年5月13日刊行,The University of Chicago Press, Chicago,xx+551 pp. with 8 color plates, ISBN:9780226712147 [hbk] → 目次版元ページ著者ページ)を読み進むための助走として,それに先立つこの姉妹本をこっそり読み進めている.
この『The Romantic Conception of Life』は,18世紀後半から19世紀初頭のドイツにおけるロマン主義か学(romantic science)に関する大著だ.先行する Naturphilosophie とロマン主義科学とのちがいを著者は強調している.すなわち,Naturphilosoph たちは有機体的自然観を打ち出し,原型(archetype)の概念を中核に据えた.シェリンク,ゲーテフンボルトの世代のロマン主義科学者たちは,Naturphilosophie に美学的・倫理的な要素を付け加えることで,自らのサイエンスを実践したと著者は言う.本書のプロローグでは,ロマン主義科学の特質は,機械論ではなく,有機体論だった(p. xvii)と書かれている.
そして,ダーウィンにもそのロマン主義的な科学観が確実に浸透していたと示すことがこの本のエピローグでの目標に据えられている.とくに,アレクサンダー・フォン・フンボルトからの影響を若きダーウィンは強く受けていたと著者は指摘する.ロマン主義科学における「形成力(Bildungstrieb)」が「自然淘汰(natural selection)」に置き換わったとまで言う(p. 518).本書の序章を見直すと,ロマン主義科学者はいずれも Naturphilosoph だったが,すべての Naturphilosophen がロマン主義科学に関わったわけではない(p. 8)と指摘されている.
そういえば,本書で代表的な Naturphilosoph として登場するローレンツオーケンについては,何年か前に論集:Olaf Breidbach, Hans-Joachim Fliedner und Klaus Ries (Hrsg.)『Lorenz Oken (1779-1851) : Ein politischer Naturphilosoph』(2001年刊行,Verlag Hermann Böhlaus Nachfolger,ISBN:3740011653目次紹介版元ページ)をぱらぱらめくったことがある.オーケンは悪い意味での「思弁的」な哲学者とばかり思いこんでいたのだが,膨大な博物図鑑を編んだ当代きってのナチュラリストであることを知って驚いた覚えがある.