『生物の驚異的な形』

エルンスト・ヘッケル著[小畠郁生監修|戸田裕之訳]

(2009年4月30日刊行,河出書房新社,141 pp., 本体価格2,800円,ISBN:9784309252247目次版元ページ

これはサプライズっ! まさか:Ernst Haeckel『Kunstformen der Natur』(1998年7月1日刊行,Prestel Verlag,ISBN:3791319787) が訳されるとは思わなかったなあ.本書の図版だけならオンライン版を見れば十分かもしれないが,ヘッケルを取り巻く時代背景とか彼の現代的意義は解説テキストがあった方がいい.だいたい,ヘッケル本の翻訳自体,いったい何十年ぶりのことだろうか.河出書房新社,えらい!

大判の図版集だが,原書は何度も見ているのでさくっと読了した.翻訳ミス散見:「フリーダ・フォン・ウシュラー・グライヒェン男爵夫人」(p. 11)=フリーダは生涯未婚だったので「男爵夫人」ということはありえない;「一元発生論」(p. 17)=「一元論(Monismus)」じゃないんですか?

あらためて,100枚におよぶ図版を見ると,ヘッケルの卓越した画才ぶりがよくわかる.オラフ・ブライトバッハが美術史の観点から,ヘッケルの波及効果を論じているのは正論だと思う.なお,この論点をめぐっては,彼の最近の著書:Olaf Breidbach『Ernst Haeckel : Bildwelten der Natur』(2006年8月刊行,Prestel,ISBN:3791336630目次)で詳しく展開されている.