『高等学校の確率・統計』

黒田孝郎・森毅・小島順・野崎昭弘

(2011年8月10日刊行,筑摩書房ちくま学芸文庫・math & science],東京,524 pp., 本体価格1,600円,ISBN:9784480093936目次版元ページ

確かに,ここに復刻された教科書(p. 33)にも指導書(p. 259)にも「自由度」の概念がいっさい登場しないのは問題かな.教える範囲が記述統計の範囲にとどまっているのならば,分散の定義として平方和をサンプル数「n」で割ってもとくに問題はないだろう.推測統計になると推定量の不偏性の問題があるので自由度「n−1」で割るのが正しい.全体を通読してみると,確かに「不偏分散」は扱わないと明記されているので(p. 240),「自由度」ということばそのものが登場しないのは当然か.しかし,指導書には自由度ということばこそ使わないものの,自由度で平方和を割った不偏分散の式がちゃんと載っている(p. 367).サンプルサイズnが大きければ「あまり気にしなくてよい」との付記があるので,正面きって自由度に触れていないことにはちがいがない.