「日本において「学術書の危機」、いわゆるモノグラフ・クライシスは学生の貧困化とともに現れる」

OUT TO LUNCH(2013年7月14日)

 → http://hrk32535.tumblr.com/post/55399787846

抜粋いくつか:

  • 「北米の学術書を買い支えていたいのは、日本とはくらべものにならないほど資金が潤沢な大学図書館なのであった。あるレポートによれば80年代は学術書刊行部数の7割を研究図書館が購入していたという。学術出版のパトロネージとして存在していた図書館が購入者としての力を失ったその行き着く先がモノグラフ・クライシスだったのである。」
  • 「日本の場合はやや異なる。まずは学術出版社の経営を支えているのは、図書館(だけ)ではない。多くは大学テキストによる収入である。」
  • 「おそらくおおくの場合、学術書は長い目で見れば不採算部門であった。先端的な研究成果発表である小部数の、ゆえに高額な学術書刊行のコストを、毎年安定した売上が期待できる教科書で賄っていたのである。」
  • 「伝統的な学術出版社のポートフォリオ戦略とは、その社会的ミッションである学術出版刊行コストを、学生(とその家庭の家計)に頼ってきた。日本の学術出版においては、図書館に変わって学生が強力なパトロネージである」

本を書く前に出版社に出す企画書の段階で,「教科書として使える可能性があるか.あるとしたら毎年どれくらい売れそうか」と問われた経験がこれまで何度かある.上のようなビジネス・モデルが背景にあるのだとしたら,とてもよく事情が理解できる.