『現象を探る:データの科学』

林知己夫著作集編集委員会(編)

(2004年11月30日刊行,勉誠出版林知己夫著作集・第4巻],東京,iv+283 pp., ISBN:4585051449版元ページ

居室の本棚を掘り起こしていたら,“カンブリア紀” 最古層から1996年に神戸で開催された国際分類学会連合大会(IFCS-96)の要旨集が “出土” した.ワタクシにとって「Data Science」なることばの初見だった.最近では「データ・サイエンス」は流行語になってしまったが,ワタクシにとってこの言葉を聞けば必ず「林知己夫の〜」という枕詞を無意識のうちにくっつけてしまう.確かに,1980年代〜90年代にかけて,その言葉は南部坂の上でしか耳にしなかった.神戸の国際分類学会連合大会の事務局長だった統数研の大隅昇さんが,ワタクシに「今大会ではあえて Data Science という言葉をお披露目した」と言った記憶がある.それくらいサーキュレーションの悪い新造語だった.もう20年も前のルーツが現在用いられている「データ・サイエンス」とどんな関係にあるのかはワタクシにはよくわからないが,個人的にはあまり気軽に口にしたくない言葉ではある.言霊言霊.

せっかくの機会なので,これまた書棚の “ジュラ紀” 地層に埋もれていた林知己夫著作集編集委員会(編)『林知己夫著作集(全15巻)』(2004年11月30日刊行,勉誠出版,東京,ISBN:4585051007 [set])の第4巻『現象を探る:データの科学』を開いたら,1980年代後半に統数研・林知己夫グループはフランスの Jean-Paul Benzécri らとともに新たなデータ解析の方法をつくるべく「Data Science」という新造語を編み出したと書かれていた.そして林知己夫はIFCS-96大会委員長講演でその言葉を演題にした.出典:林知己夫「データ解析からデータサイエンスへ:科学としてのデータを語る」(1996)『現象を探る:データの科学』pp. 255-267.