『The Lepidopterists' News』

 → http://images.peabody.yale.edu/lepsoc/nls/

アメリカ鱗翅学会(the Lepidopterists' Society)の会報である The Lepidopterists' News の古い号(1950年代)を探索していたら,Yale University の Peabody Museum から全巻が電子化公開されていることを知った.ポータルサイトから入ると1958年以前の巻が見えないけど,キーワード検索するとちゃんと1947年創刊号以降のpdfにたどりつける.少なくともワタクシが探していた1950年の第4巻はOKだった.ターゲットは下記の一連の記事:

  1. F. Martin Brown 1950a. Measurements and Lepidoptera. The Lepidopterist's News, 4: 51-52. pdf
  2. Vladimir Nabokov 1950. Remarks on F. Martin Brown's 'Measurements and Lepidoptera'. The Lepidopterist's News, 4: 75-76. pdf
  3. F. Martin Brown 1950b. In reply to Prof. Nabokov. The Lepidopterist's News, 4: 76. pdf

Nabokov が前年に出した “ブルー” のモノグラフ:Vladimir Nabokov 1949. The nearctic members of the genus Lycaeides Hübner (Lycaenidae, Lepidoptera). Bulletin of the Museum of Comparative Zoology, 101(4): 477-541 → Biodiversity Heritage Library に対して,Martin Brown がゲニタリアの計測データをちゃんと統計分析していないじゃないかと指摘したことが論争の始まりだった.Nabokov は反論して,もともと分類学的にめんどうな群なんだから,いくら統計学をもちだしたってムダじゃんと言ったところまではよかったのだが,うっかり筆を滑らせて「とどのつまり,自然科学にとって哲学は重要だけど,統計学はそんなことないよね」(p. 76)などと書いてしまった.おかげで,Martin Brown からは「そんな哲学なんか豚に喰われりゃいいんだ.分類学統計学はそれ自身が目的じゃなくって,自然科学にとってのツールでしょ.分類学者や統計学者はそこんところをわかってないみたいだけど」(p. 76)と倍返しされる始末.Martin Brown は正論を言っただけなのにね.