『ウェブ進化論:本当の大変化はこれから始まる』

梅田望夫

(2006年2月10日刊行,筑摩書房ちくま新書582], ISBN:4480062858



5週間で書き上げたというアップテンポの新書だから,イッキ読みしてあげないと著者に失礼?というものだろう.250ページを90分あまりで読了.

インターネット世界のいろいろな「現象」 — ロングテール現象とかオープンソース現象,あるいはブログ文化 — を報告している.“Web 2.0”ってこの本ではじめて聞いた言葉だぞ.グーグルってそういう企業だったのか,と納得してしまった.P. 223 に載っている〈ウェブ進化図〉を見るだけでもこの本を手にした甲斐はあったな.「不特定多数無限大への信頼」があるかどうかという踏み絵は,ぼくには踏めないですね.「匿名者」は“しゃべる石”に過ぎないという認識はいまだに覆されていないので.つまりは,Wisdom of Crowds は認めても,最後は「実名者」のみおっけーということ.こういう世代間での認識のズレは,新世代の登場とともに変わっていくだろうという著者の意見はその通りだと思います.「老兵」は消え去るのみだ.

ひとつ,おもしろい話題があった —— 「フォークソノミーfolksonomy)」,すなわち「folks+taxonomy」という概念(pp. 198-199).あるオブジェクトをカテゴリー分類するのに,マス・コラボレーションでもって“分類”してしまおうというお話.楽しいじゃないですか.そのオブジェクトとしては「生き物」もありですよね.ということは,「不特定多数無限大への信頼」に基づく“正しい生物分類(自然分類ともいう)”が Web 2.0 world では可能なのでしょう.※誰かやらない?

—— この新書はとてもよく売れているらしい.著者自身のブログ(当然,はてな!)からはさまざまな反響が聞こえてくる.


『ウェブ進化論:本当の大変化はこれから始まる』

梅田望夫

(2006年2月10日刊行,筑摩書房ちくま新書582], ISBN:4480062858



【目次】
序章 ウェブ社会 — 本当の大変化はこれから始まる 9
第1章 「革命」であることの真の意味 27
第2章 グーグル —& 知の世界を再編成する 47
 1. グーグルの実現する民主主義 48
 2. インターネットの「あちら側」の情報発電所 56
 3. グーグルの本質は新時代のコンピュータ・メーカー 64
 4. アドセンス — 新しい富の分配メカニズム 72
 5. グーグルの組織マネジメント 78
 6. ヤフーとグーグルはどこがちがうのか 89
第3章 ロングテールWeb 2.0 97
 1. 「ロングテール現象」とは何か 98
 2. アマゾン島からアマゾン経済圏へ 112
 3. Web 2.0ウェブサービスAPI 公開 120
第4章 ブログと総表現社会 135
 1. ブログとは何か 136
 2. 総表現社会の三層構造 145
 3. 玉石混淆問題の解決と自動秩序形成 152
 4. 組織と個とブログ 161
第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション 173
 1. オープンソース現象とその限界 174
 2. ネットで信頼に足る百科事典は作れるか 187
 3. Wisdom of Crowds 194
第6章 ウェブ進化は世代交代によって 209
 1. インターネットの普及がもたらした学習の高速道路と大渋滞 210
 2. 不特定多数無限大への信頼 217
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち 227
初出について 243
あとがき 245