『トリック・アイズ グラフィックス』

北岡明佳

(2005年7月近刊,カンゼン,ISBN不明)



数々の錯視パターン作品で有名な北岡明佳さん(→〈北岡明佳の錯視のページ〉)が今月末に出す予定の錯視本の新刊.

動かないはずのものが動き,見えないはずのものが見えてしまうという「錯視」をうまく使って系統樹の「可視」化の手法を改良できないかと考えているところ.見えないはずの枝を錯視で見せてしまう,ヤバそうな枝は後景に後退させる,重なっているところは3次元ステレオグラムで見せてしまう,というような誰でも思いつきそうなことはきっと誰かがやるだろう.

むしろ,[超]巨大系統樹の可視と錯視による「絵化」が愉しそうですね.たとえば,巨大系統樹の可視化ソフトウェア〈TreeJuxtapozer〉を開発したチームは,最近〈H3Viewer〉というさらに強力なツールを配布している.これを用いると30万エッジのグラフやツリー,ネットワークが描けるという.また〈Walrus〉という別のソフトウェアでも,同程度の規模のグラフの静止画と動画が描けるという(→ギャラリー).こういう,可視化ツールに錯視技術を組み合わせて,人間側の“系統樹把握度”を向上させるという研究があってもいいはず.phylogenetic supertree あるいは phylogenetic network も最適グラフの推定手法の開発と併せて,可視化手法の開発もやらないとユーザーに染み込んでいかないと思う.

「"phylogenetic tree", visualization」で検索してみると,あるわあるわ.

—— さっそくご指摘をいただく.〈H3Viewer〉の方が〈TreeJuxtapozer〉よりも“祖先的”だろうとのこと.開発者Tamara Munzner博士のページを見る.確かにそのようだ.さらに言えば〈Walrus〉も同根みたいだし.

駒場ではちょうどいま展示されているのですね.→〈錯覚展:心の働きにせまる不思議な世界〉.