2015年5月11日(月)まで,オアゾの丸善にて『THE BOOK OF TREES ― 系統樹大全』ブックフェアが開催されている(→証拠写真).ブックフェア用にワタクシがリストアップした本は下記の通り:
- 三中信宏(文)・杉山久仁彦(図版)『系統樹曼荼羅:チェイン・ツリー・ネットワーク』(2012年11月, NTT出版, 東京, 255 pp, 本体価格2,800円, ISBN:9784757142633)※コメント「古今東西にわたって広く分布してきた系統樹ダイアグラム(チェイン,ツリー,ネットワーク)を蒐集し,分野の壁を超えて共通に用いられてきた可視化ツールとしてのダイアグラムの多様性と類似性を考察した図版集.」
- マニュエル・リマ[久保田晃弘監修/奥いずみ訳]
『ビジュアル・コンプレキシティ:情報パターンのマッピング』(2012年3月,ビー・エヌ・エヌ新社,東京,272 pp., 本体価格3,800円, ISBN:9784861007835)※コメント「最先端のコンピューター・ツールを用いて情報の可視化とマッピングを行なう数々の技法をみごとなカラー図版とともに示している.階層的かつ分岐的なツリーからより複雑なネットワークへと移行するための思考の転換を迫る意欲作.」
- パオロ・ロッシ[清瀬卓訳]『普遍の鍵〈新装版〉』(2012年8月,国書刊行会, 東京, ISBN:9784336055330)※コメント「中世思想史における “記憶術” は情報の可視化と検索の長い歴史に一時代を画した技法の体系だった.本書は,ともすれば非科学的な “暗黒の中世” の遺物のように誤解されているこの “記憶術” の実相を追究した名著である.」
- フランセス・A・イエイツ[玉泉八州男監訳]『記憶術』(1993年6月,水声社, 東京, ISBN:4891762527)※コメント「本書を読めば,かつて中世で大きく開花した魔術的な “記憶術” の末裔が現在のインフォグラフィックスにもつながっていることがわかるだろう.大量かつ複雑な情報をいかに効率的に視覚化し,ユーザーである人間に役立てることができるかという問題は昔も今も変わりがない.」
- アーサー・O・ラヴジョイ[内藤健二訳]『存在の大いなる連鎖』(2013年5月10日刊行,筑摩書房[ちくま学芸文庫・ラ-10-1],東京,643+ ix pp., 本体価格1,700円,ISBN:9784480095367)※コメント「動植物はもちろん鉱物にいたるまでの自然界の事物を直線的に配置する “存在の連鎖” という観念は,2000年前のギリシャ時代から連綿と続く可視化の方策だった.その “存在の連鎖” の思想史を詳述する本書が文庫版で手にできるとはいい時代になったものだ.」
- リナ・ボルツォーニ[石井朗・伊藤博明・大歳剛史訳]『イメージの網:起源からシエナの聖ベルナルディーノまでの俗語による説教』(2010年12月,ありな書房,東京,8 color plates + 342 pp., 本体価格6,400円,ISBN:9784756610164)※コメント「文章(テクスト)と付随する図版(パラテクスト)との関係性を中世の宗教史にさかのぼって考察している.系統樹などさまざまなダイアグラムの祖先型はどのようにして出現したのか,その歴史的文脈が見えてくる.」
- ホルスト・ブレーデカンプ[濱中春訳]『ダーウィンの珊瑚:進化論のダイアグラムと博物学』(2010年12月,法政大学出版局[叢書ウニベルシタス949],東京,16 color plates + iv+185 pp., 本体価格2,900円,ISBN:9784588009495)※コメント「進化学者チャールズ・ダーウィンが生物の系統発生を視覚化するために用いた “系統樹” の図像学史をたどるめずらしい本.ダーウィンが描いた系統樹は現実の海にいる “珊瑚” がモデルだったという著者は提案する.」
- エルンスト・ヘッケル著[小畠郁生監修|戸田裕之訳]『新装版・生物の驚異的な形』(2014年8月,河出書房新社,東京, 本体価格2,800円,ISBN:9784309253046)※コメント「生物とその多様性をあふれんばかりの画才をもって描き切った19世紀の進化系統学者エルンスト・ヘッケル.彼の作品は生物学だけでなく,アート・建築・グラフィックデザインなど広範な影響を及ぼした.」
- 杉浦康平『生命の樹・花宇宙』(2000年7月,NHK出版[万物照応劇場],東京,270pp., ISBN:4140804882)※コメント「文化史的イコンである “生命の樹” は西洋だけではなく東洋にも広く分布している.本書は東アジア全体を視野に置き, “生命の樹” という図像ダイアグラムが伝えられてきた文化的伝統と社会的文脈を明らかにしようとする.」
- 靳之林[岡田陽一訳]『中国の生命の樹』(1998年12月,言叢社,東京, ii+414 pp., 本体価格9,500円, ISBN:4905913632)※コメント「躍動と繁栄の象徴である “生命の樹” は西洋にのみ見られるイコンではない.本書は,おびただしい数の図版とともに,中国において長い歴史をもってきた “生命の樹” の文化的背景を掘り起こした稀有の本.」
- ティム・インゴルド[工藤晋訳]『ラインズ:線の文化史』(2014年6月,左右社,東京,267+viii pp., 本体価格2,750円, ISBN:9784865281019)※コメント「もっとも単純な図形である “線” がもつきわめて奥深く豊かな広がりを文化・芸術・思想・認知・系譜など異なる視点から考察した本.“線”のもつ動きと変化と広がりにはさまざまな情報や意味をもたせることができる.」
- キャロル・キサク・ヨーン[三中信宏・野中香方子訳]『自然を名づける:なぜ生物分類では直感と科学が衝突するのか』(2013年9月,NTT出版,東京,vi+391 pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784757160569)※コメント「多様な事物を整理してその知識を体系化しようとする “分類の精神” は情報可視化を心のなかで強く動機づける.われわれ人間はなぜそもそも分類の欲求をもつのだろうか? 本書は生物分類学の長い歴史に分け入り,人間がもつ直感的な認知の特性がいかにして “分類の精神” を形成してきたかを描いている.」
- 中尾央・三中信宏(編著)『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』(2012年5月, 勁草書房, 東京, x+213+xi pp., 本体価格3,200円, ISBN:9784326102167)※コメント「多様性に関する知識を必要とする分野は生物分類学だけではない.本書は言語学・写本学・美術史・文化史など生物学以外のさまざまな学問において生じる分類と系統の問題を指摘し,それらに共通する体系化の方法論の構築について考察する.対象は異なっていても,適用できる手法は収斂している.」
- 杉浦康平『時間のヒダ、空間のシワ…[時間地図]の試み:杉浦康平ダイアグラム・コレクション』(2014年10月,鹿島出版会,東京,101 pp., ISBN:9784306046061)※コメント「半世紀前の1960年代から現在まで,日本のグラフィック・デザイン界を先導してきた杉浦康平によるダイアグラム論集成.時間軸を中心にさまざまな情報とデータを視覚化する数々の提案.可視化ツールとしてのダイアグラムの大舞台.」
- 伊藤俊治『唐草抄:装飾文様生命誌』(2005年12月,牛若丸/星雲社,258pp., ISBN:4434071645)※コメント「 “唐草模様” は “生命の樹” と並行して用いられてきたダイアグラムでもある.本書は装飾模様としての “唐草” がたどってきた系譜を振り返り,西洋から東洋にかけて変容しつつ分布を広げてきた歴史を復元する.」
- 荒俣宏『新装版・世界大博物図鑑(全5巻)』(2014年12月,平凡社,東京)※コメント「西洋の博物学の長い伝統のなかで培われてきた生物多様性の可視化の精神は18〜19世紀にかけて相次いで出版された大判の彩色図鑑として華やかに開花した.現在ではきわめて高価な稀覯書となっているこれらの彩色図鑑をもとに編まれた世界大博物図鑑が新装復刻されたのは喜ばしいかぎりである.」
そういえば,ヨドバシアキバの有隣堂書店でもインフォグラフィクスの特設コーナーがあって,マニュエル・リマ本を中心に配架されていたな.他の書店さんでもブックフェアさせてもらいまっせ〜.