『9.11 生死を分けた102分:崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言』

ジム・ドワイヤー&ケヴィン・フリン

(2005年9月15日刊行,文藝春秋ISBN:4163674306



一言で言えば〈読む映画〉.衝突から崩壊までの2時間足らずの限られた時間に「中で起こったこと」を救助関係者からの聞き取り,電話交信記録の解読,そして生還者の証言を通じて復元していく.おびただしい数の個人が登場し(生還できたりできなかったり),画面分割的に生々しいシーンが交錯して,せっぱつまった状況を描く言葉がそのまま脳裏にダイレクトに映像化されていく印象を受けた.

3時間ほどで読了した.〈映画〉の長さとしては適当だと思う.四の五の言わずにまずは読みましょうね.読んで見ればわかる.もちろん必読書.森山和道さんも「とにかく読むことを強くおすすめしたい一冊である」と言っているし.ぼくはこの本を読みながら,かつてのパニック映画〈ポセイドン・アドベンチャー〉を連想していた.そして,本を閉じたあとで,それが“現実”に起こったことをあらためて思い知らされた.




【目次】
訳者まえがき 1
まえがき 14
プロロ−グ:北タワ− 午前8時30分 一万四千百五十四の人生 20
爆弾だ! 逃げろ! :北タワ−午前8時46分 一機目激突 37
今日のトップニュ−スだ:南タワ− 午前8時47分 ばらばらな行動 47
ママ、おしゃべりしたくて電話したんじゃないんだよ:北タワ− 午前8時48分 避難開始 67
上の階との連絡手段が確保できていません:北タワ− 午前8時50分 通じない無線 82
ここにいたほうがいいんだろうか、それとも避難するべき?:南タワ− 午前8時55分 全員退去命令 107
ドアから離れろ!:北タワ− 午前9時1分 民間人の脱出劇その一 132
事情が許すなら、あわてずに順に避難を始めてください:南タワ− 午前9時2分 二機目激突 145
こっちには行けないよ:南タワ− 午前9時4分 明暗分けた非常階段 180
屋上に出るドアに鍵がかかっている:北タワ− 午前9時5分 無力なヘリコプタ− 192
わしはまだまだ元気いっぱいだ:北タワ− 午前9時15分 民間人の脱出劇その二 219
ぼくは友だちのそばにいることにするよ:南タワ− 午前9時20分 そのころ救助隊員たちは 247
今の話を長官にもしてくれ:南タワ− 午前9時22分 南タワ−崩壊 270
すぐに降りていくよ:北タワ− 午前9時59分 タイタニック号的心理状態 307
わからないのか、この建物は今にも崩れるんだぞ:北タワ− 午前10時20分 北タワ−崩壊 331
エピロ−グ:グラウンド・ゼロ 午前11時 ありのままの事実 355
失われた人たち 379