『早稲田古本屋街』

向井透史

(2006年10月1日刊行,未來社,ISBN:4624400593



読了.序章は明治時代に早くも拓かれた早稲田古書店街の歴史舞台.関東大震災の天災と第二次世界大戦の戦火を越えて戦後の世代へと続く.第1章から第3章にかけては,ワセダの古書店それぞれの「小伝」をまとめている.小伝のひとつひとつは確かに短いが,まとめて読むととても印象に残る.とりわけ,書店間の背後にある系譜関係(姻戚関係とか暖簾分け)がたどれるのがおもしろい.早稲田古本市の歴史をたどった第4章は記録としては役に立つだろうが,どことなく業界内輪話のようで,ぼくにはあまりおもしろくなかった.

向井透史のこの新刊と前著『早稲田古本屋日録』(2006年2月28日刊行,右近書院,ISBN:4842100664)は,早稲田という地域に限定された古書店古書店街の歴史を描いている.ぼく自身は,高田馬場駅前を除いては,このエリアにほとんど足を踏み入れたことがない.しかし,いつか機会があったらまわってみようかな.

書店(not 出版社)の「伝記」といえば,リン・ティルマン『ブックストア:ニューヨークでもっとも愛された書店』(2003年1月30日刊行,晶文社ISBN:4794965583)と W. G. Rogers『Wise Men Fish Here : The Story of Frances Steloff and the Gotham Book Mart』(1965年刊行,Harcourt, Brace & World,ISBN:なし)の2冊がまず思い浮かぶ.出版社や出版人の伝記はいろいろあっても,本屋の伝記は相対的に少ないような気がする.そう考えると,日本での「古書店主回想録」の多さは異例のことなのかもしれない.

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