『だまされる視覚:錯視の楽しみ方』

北岡明佳

(2007年1月20日刊行, 化学同人[DOJIN 選書 001], ISBN:9784759813012



日射しのあまりの強さにくらくらしつつ,歩き読みしたのだが,うわ,ダメだ,こりゃ.「錯視の本」を歩きながら読んではいけません.練り上げられた視覚的錯覚なのか,歩行に伴う物理的振動なのかごっちゃになって,さらにくらくらしてしまう.200ページを読了.錯視のテキストブックを目指していると著者が言うように,錯視が生じる原因について詳しく解説している.

本書には数多くの図が載っているが,カラーではなく,モノクロなのがちょっと残念(と思った読者は同じ著者の手になるカラー図版満載の別の本を手に取るか,あるいは〈北岡明佳の錯視のページ〉に直行すべし).しかし,白黒図版でも十分に“曲がって”“歪んで”“凸凹して”“揺れ動いた”のはさすがだ.「錯視」を純粋に楽しむ態度が涵養されているのは,日本人ではなく,外国人だそうだ.個人的には,この錯視を視覚化のツールとしてうまく使いこなせないかと考えているのだが.

—— 余談:本書の版元である「化学同人」は京都の出版社で,東京にある「東京化学同人」とは別会社であることを初めて知った.ぜんぜん知らんかったぁ.

版元ページ著者ページ




【目次】
まえがき 1

第1章 錯視とは何か 13

錯視は脳で起こる/錯覚とは何か/錯視の多くは知覚レベルの錯覚/勘違いの心理学/蜃気楼は錯覚か/錯視はなぜ起こるのか/錯視にかかわる脳領域/錯視の楽しみ方

第2章 静止画がなぜ……止まっているものが動いて見える錯視 27

1. 動く錯視の発見――オオウチ錯視 28
オオウチ錯視/なぜ動くのか/回転する錯視/もう一つのオオウチ錯視
2. 四つの色で動きをつくる――四色錯視 36
四色錯視/簡単につくれる四色錯視/四色錯視で回転錯視 
3. 「蛇の回転」 47
「蛇の回転」錯視/「蛇の回転」で遊ぶ/「蛇の回転」の歴史/傾きと渦巻き/なぜ「蛇の回転」は起こるのか/「逆」フレーザー・ウィルコックス錯視 
4. 「ボート」――中心ドリフト錯視 64
中心ドリフト錯視/中心ドリフト錯視で遊ぶ 
5. 「コメの波」――波の錯視 70

第3章 同じ明るさなのに……明るさの錯視 73

1. 「コンクリートの柱」――明るさの対比と同化 74
2. 「森」と「太陽」――境界が重要な明るさの錯視 77
3. 周りの明るさの影響――T接合部が重要な明るさの錯視 81
4. 「帽子」――ログヴィネンコの錯視とエーデルソンの錯視群 86
5. 「二人の女性」――輝度勾配依存の明るさ錯視 90
6. 黒い霧と白い霧――透明視依存の図地分化による明るさの錯視 95
7. 「神経細胞の発火」――ヘルマン格子錯視ときらめき格子錯視 99
8. 「光る菊」――輝き効果 104

第4章 水平のはずが……傾きの錯視 107

1. 「だんご30兄弟」――ツェルナー錯視とフレーザー錯視 108
ツェルナー錯視/彎曲錯視/フレーザー錯視
2. 「黒ダイヤ」――カフェウォール錯視 115
カフェウォール錯視/カフェウォール錯視の彎曲錯視/カフェウォール錯視の動く錯視と渦巻き錯視/簡単にできるカフェウォール錯視 
3. 「クッション」――市松模様錯視 129
市松模様錯視/ 「膨らみの錯視」/市松模様錯視の波の錯視と動く錯視 
4. 「卯図」――カフェウォール錯視の仲間の錯視 137
黒白円の錯視/ずれたグラデーションの錯視/縞模様コードの錯視 
5. 「カメの養殖」――エッジの変化で傾く錯視 151
縁飾りエッジの錯視/ずれたエッジの錯視

第5章 だまし絵は錯視か?――いろいろな錯視 157

1. だまし絵と錯視 159
だまし絵の歴史/錯視デザインの創始者/錯視デザインの歴史/だまし絵と錯視の違い――「錯視=役立たず」か
2. トリックアートの手法――影(シャドー)と陰(シェード) 169
3. ステレオグラムと錯視 175
なぜ立体的に見えるのか/ランダムドットステレオグラムとオートステレオグラム  
4. 反転図形、不可能図形と錯視 181
反転図形/不可能図形


あとがき 187
参考文献 [194-191]