『書物の日米関係:リテラシー史に向けて』

和田敦彦

(2007年2月28日刊行,新曜社ISBN:9784788510364



第3章「戦時期日本語教育と日本研究」.40ページほど.第二次世界大戦中のアメリカでの日本語教育を蔵書史の観点から論じる.大戦中の日本が「鬼畜米英の敵性語」とみなして英語を徹底的に排除していたちょうどその頃,アメリカ本土では逆に〈日本語・虎の穴〉ともいえるスパルタ叩き込みで選りすぐりの人材に日本語教育を施していたそうだ.

たとえば,コロラド大学の海軍日本語学校では,週6日,1日14時間という強行課程で1年にわたって日本語を生徒に詰め込んだという.もちろん校内では英語禁止で日本語漬けの日々を受講生は過ごしたらしい(彼らは試験前の「金曜の夜の地獄」とか,タテ書きに酔う「日本頭」に悩んだそうだ).しかも,この日本語学校の校歌の歌詞は:



進めつわもの いざ進め
星条の旗 先立てり
民主の民の 弥栄え
理想の国を 建つるまで
勉め励めよ 国のため
世界に光 及ぶまで

(p. 110)と日本語で書かれていて,受講生たちは日本の他の軍歌とともに放歌したという.両国のあまりのちがいにくらくらしてしまう.

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