『セヴェラルネス:事物連鎖と人間』

中谷礼仁

(2005年1月25日刊行, 鹿島出版会,東京,270 pp., ISBN:4306044602

まず,装丁がいいな.ちっとも鹿島出版会らしくないところが(笑).



「セヴェラルネス(severalness)」というキーワードはあまり聞き慣れない.しかし,「単一」ではなく,かと言って「無限」でもない,いくつかの「有限」な場合のみが許されることを示す言葉としては納得がいく.著者は,クリストファー・アレグザンダーの「セミラティス」論を本書のいくつかの章で言及している.ツリーで表示される厳密なヒエラルキーは「単一」の階層構造は示す.一方,そのような構造性がまったくないときには「無限」の可能性が内包される.しかし,複数のツリーからなる「セミラティス」は,その中間にあって,いくつかの「有限」個の状態を指示する.だから,「セヴェラルネス」.系統ネットワーク理論を知っていれば,まったく違和感なく,著者の言わんとするところが理解できるだろう.



6月の ICCシンポジウム〈アーカイヴが紡ぐ未来:再連結する情報〉で,初めて著者の中谷さんと同席したのだが,建築学というまったくの畑違いの世界であるにもかかわらず,彼が使っていた「ことば」は意外なほどよく染み込んできた.おそらく,建築学の対象である都市構造とか配置あるいは建築物の歴史性は,“系統学的”な考察の対象になるということだろう.



目次著者サイト