『お酒を120%楽しむ!』紹介

田村隆明
(2020年3月27日刊行,東京化学同人,東京, viii+246 pp., 本体価格1,400円, ISBN:978-4-8079-0984-1版元ページ

版元から依頼され,最終ゲラを事前に読ませていただきました.どうもありがとうございます.以下は紹介文です:

【書評】※Copyright 2020 by MINAKA Nobuhiro. All rights reserved

魅惑のお酒の世界ガイドブック

本書は「お酒」の世界を広く見渡した本だ.日本酒はもちろん焼酎・ワイン・ビール・ウィスキー・ブランデー・コニャックその他スピリッツまで,アルコール飲料がいまどのようにつくられそして飲まれているのかをカラー図版をふんだんに使って説明している.著者は分子生物学が専門とのことで,これまで生化学や遺伝子工学まで含めて多くの著作を出している.

 

本書『お酒を120%楽しむ!』にも著者の専門的知識がふんだんに盛り込まれていて,「お酒の科学」を学ぶ上ではとても重宝するだろう.専門にわたる詳細な内容(発酵に関わる化学反応や遺伝子の構造など)についてはあまり深く立ち入ってはいないのは想定される読者層を考えれば賢明な選択だったかもしれない.その代わりに,カラー図表による説明が適切に配置されているのは読者への配慮といえる.

 

以上は前半の第I部についてだが,続く第II部はお酒を飲んだら気になるさまざまな疑問についての一問一答集だ.最後の第III部は呑んべなら避けては通れない「お酒と健康」の解説で,ワタクシにとってはこの部分だけでも心して読む価値があった.

 

著者はこれまで日本国内と世界各地の酒文化を経験してきた.その豊富な体験を踏まえたエピソードが随所にボックスとして配置されている.こういうくつろいだ “酒語り” は読むだけでシアワセになれるし,一方ではうらやましくもある.世の中には「日本酒本」「ビール本」「ワイン本」「ウィスキー本」などカテゴリー別に書かれた本はすでにたくさんあるが,本書のように単一著者が全カテゴリーを網羅した “お酒鳥瞰本” は意外に少ないのではないだろうか.多様のお酒の世界をまたぐ比較の視点をじっくり楽しみたい.

 

三中信宏(2020年3月29日)