「無差別にすべて記録すること」

ワタクシは大学の学部卒業以来の全アウトプットを記録に残していて,テキストファイルにして220KBの分量がある.自分の研究活動は自分ですべて記録しておかないと,節目節目でとても困ったことになる(自分だけではなく周囲の人たちも).

ワタクシの場合は,今から20年あまり前の1993年5月10日にふと思い立って,「全出力リスト」をつくり始め,現在にいたるまで続いている.こういう自己活動記録をつくるときに,やってはいけないことは「記録項目を選択すること」に尽きる.記録するしないをいったん選び始めると,必ず漏れ落ちが出てくるからだ.原則は「すべて記載すること」.どんな細かいことでも些細な項目でも記録しつくす.

ワタクシの「全出力リスト」の冒頭には,モットーとして「何を研究活動の「生産物」とみなすかについては意見が分かれるところですが、ここでは川那部浩哉氏の意見と実践にしたがい、裾野を広くひたすら網羅することをモットーとしてリスト作りをしました」と掲げた.川那部浩哉は,京大生態研究センター所長だった1992年5月に,「はじめに」(京都大学生態学研究センターニュースNo.7[京都大学生態学研究センター業績目録第1巻], pp.1-2)のなかで,自らのアウトプットは無差別にリストアップすると宣言した.そして,実際,[スタッフ業績目録]川那部浩也. 京都大学生態学研究センターニュース No.7[京都大学生態学研究センター業績目録第1巻], pp.24-49 のなかで,無差別にあらゆるアウトプットを公開した.

甲山隆司 (1993) は,「あとがき」(京都大学生態学研究センターニュースNo.14[京都大学生態学研究センター業績目録第2巻], p.32)で,この川那部浩也の「方針」は無節操であると厳しく指弾したが,川那部のこだわりはけっして変わらなかった.

研究業績リストは提出先によって基準や様式が異なるのがふつうだ.だから,とりあえず無差別に全部記録しておけば,あとはその「真部分集合」をそのつど切り出せばいいというのがワタクシの基本方針.「選ぶ」のは基準さえあればラクだけど,「選ばない」ためには確固たる決意が必要だろう.