『統計思考の世界:曼荼羅で読み解くデータ解析の基礎[仮題]』経緯

三中信宏

(2016年刊行予定,技術評論社,東京 → 目次案

夏休み前にやっと脱稿.本文と文献リストの文字数はテキストファイルで499,767バイト≒624枚/400字,図版は計147枚.当初の予定を大幅に上回る分量になった.これホンマに出るんですか?

前著『みなか先生』本はゆったり歩いて実験計画法までハイキングしたが,今回予定している統計本はさらにその先の一般化線形モデル,モデル選択論,リサンプリング統計学ベイズ統計学,多変量解析,統計グラフィクスまでカバーするワタクシにとっての「講義録」である.

自戒かたがた,脱稿までの経緯を記録しておこう.もともと本書『統計思考の世界』は2011年2009年10月9日に企画案が技術評論社からもちこまれた.もう6年も前のことだった.タイミングよく旧農環研ウェブ高座 〈農業環境のための統計学〉が始まった.この毎月の連載講座はまる一年続き,毎回10枚/400字の分量だったので,2013年8月の連載終了時には計120枚分の原稿が蓄積されていた.これを元手にして書けば楽勝だと安心したのが運の尽き.【教訓】「過去に書いた分量はこれから書く分量とは無関係である」.

ところが,2014年2月から羊土社の連載〈統計の落とし穴と蜘蛛の糸〉が始まり,一年間の連載後即座に単行本化の作業になだれ込んだ.この時点で技術評論社本のことは脳裏から消し飛んでいた.【教訓】「同テーマ本を並行して抱え込んではならぬ」.

こうして2015年も暮れていった.技術評論社の担当編集者からはときどき加圧メールが届いていたのだが放置状態が続いてしまった2016年の年度末.ついに「立案から6年が経過したので本出版企画の見直しを求められています」との最終通告が届く.【教訓】「担当編集者を追い込んではならぬ」.

この時点では過去の遺産の120枚を4章に組み直した原稿があるだけだった.しかし幸いなことにワタクシはこの「苦境」の脱し方を知っていた:「How to Write a Lot:ひとつの実践」.ワタクシのつぶやきに「〜字だん」という自己加圧ツイートが増えていったのは5月のGW後からのこと.「塵も積もれば山となる」― これを実感できている人は少なくないだろう.たとえば毎日10ツイート分(1,400字)をつぶやきではなく原稿に当てるとする.十日で14,000字,一ヶ月で42,000字つまり400字詰にして100枚も書ける.三ヶ月続ければ新書1冊分だ.この「整数倍の威力」はやってみれば誰にでも実感できる.毎日少しずつでも書き続ければきっとシアワセになれる.もちろん,もっとたくさん書き続ければもっと早くシアワセになれる(かもしれない).

そんなわけで,『統計思考の世界』の第5〜14章の500枚はほぼ3ヶ月で書き上げたことになる.もっと早くスタートしていれば,こんなに追い込まれることはなかったにちがいないと反省しつつワタクシは夏休みに入れたのであった.

[2018年3月25日加筆修正]