伊藤憲二
(2023年7月18日刊行、みすず書房、東京, 2 plates + viii, 1-486 + 84 pp. / viii, 487-1007 + 134 pp., 本体価格5,400円/6,000円, ISBN:978-4-622-09618-4 / ISBN:978-4-622-09619-1 → 版元ページ[上巻]/ 版元ページ[下巻])
ワタクシの場合、みすず書房の重くて大きい本を買うときは、なんのかんのと自分会議で激論を戦わせたあげく、エイヤッと “清水の舞台” から飛び降りるのが常だった(そうやってこれまで何遍も飛び降りてきた)。しかし、今回はそうではなかった
先日のこと、夜も更けた闇の中から「ひい、ひやぅ」と鵼の鳴く声が聞こえてきたので、これは兇兆にちがいない。すぐさま憑き物落としをせねばならぬと、今日さっそく書店の面陳棚から上下巻計1,200ページをつかんでレジに走った。何も考えずに “清水の舞台” から飛び降りたようなものだ。
世の京極夏彦ファンにはまだ知られていないようだが、『鵼の碑』を読み解くためには、この2巻2段組の “鈍器本” をいつかどこかで手にした方が身のためだ。みすず書房だからといってまたいで通り過ぎてはならぬ。この『励起』さえあれば「この世にはね、不思議なものなど何もないのだよ」。合掌。