『中華飲酒詩選』

青木正

(2008年4月10日刊行,平凡社東洋文庫・773],東京,376 pp., ISBN:9784582807738版元ページ

陶淵明李白・白楽天の大きく三つの部分に分かれている.第一部の陶淵明から読み始める.陶淵明の「雑詩」にある有名な一節「盛年不重來/一日難再晨/及時當勉勵/歳月不待人」には,「時に後れず,せい出して遊ぶべきだ」という訳文が付けられている(p. 52).すばらしい! 著者はこの漢詩はけっして「教訓詩」などではなく,「漢代以来伝統ある無常観的快楽詩」であると述べている.中国の酒飲み本のBGMはマーラー大地の歌〉しかない.晋の陸機の漢詩「百年歌」が採録されている(pp. 77ff.).十代から始まる人生歌は判で押したように「清酒漿炙奈楽何/清酒漿炙奈楽何」というリフレインで終わる.「清酒に炙肉,此の楽しさを何とせう」と訳されている.そうだそうだ.また,李白の「将進酒」いわく:「古来聖賢皆寂寞/惟有飲者留其名」(=「古より聖賢も死んでしまえば後はひっそり/ただ酒飲みだけが名を残している」p. 94).そうだそうだ.著者・青木正児の名前は坂口謹一郎の本でも見たし,石毛直道の本でも引用されていた.筋金入りだ.