『明治の冒険科学者たち:新天地・台湾にかけた夢』

柳本通彦

(2005年3月20日刊行,新潮新書108,ISBN:4106101084



日清戦争の“戦利品”のひとつとして獲得された「台湾」を目指した探究者の足跡をたどった本.10年あまり前に出た山崎柄根『鹿野忠雄:台湾に魅せられたナチュラリスト』(1992年2月20日刊行,平凡社ISBN:458237381X)がすぐに脳裏に浮かぶが,最近ではこの手のテーマを扱った類書はほとんどないと思う.数年前に焼津の魚類科学研究所に蔵書整理にうかがったおり,故・渡部正雄蔵書の中に戦前の台湾に関する民俗調査書や先住民の記録のたぐいが大量にあったことを記憶している.戦前の資源科学研究所の活動にからむ資料だったのだろうか.『明治の冒険科学者たち』は3人の主人公(伊能嘉矩・田代安定・森丑之助)に順番にスポットを当てていく.3人目の森丑之助は台湾先住民族ルポルタージュを作成するという業績を残したが,最期は鹿野忠雄のように謎の失踪(死亡?)を遂げる.読書慾をそそる本.