『東大教授の通信簿:「授業評価」で見えてきた東京大学』

石浦章一

(2005年3月10日刊行,平凡社新書263,ISBN:4582852637



とてもおもしろいと直感したのでさっそく速攻読了.「駒場」ならではの教育システムを前提にした,大学での授業のあり方についての本.学生による9万通を越えるアンケート調査に基づく,教員の授業評価の分析と提言(ファカルティ・ディベロップメント)が本書の核心部分だ.かつて,そのシステムのもとで授業を受けた学生のひとりとして,また今では[ときどき]そのシステムのもとで教壇に立つ非常勤講師のひとりとして,この本に書かれていることは他人事ではない.書かれてある内容がどれくらい一般化できるか,「本郷」や他の大学にもはたして当てはめられるのかという予想される論議の以前に,授業を提供する講師はそれを提供される学生からつねに「見られている」という認識が必要だという“ごく当然のこと”を著者が繰り返し強調していることに耳を傾けたい.