『リリ・ヤーンの手紙』

M・デリー著(山下公子・泉晶子訳)

(2006年2月8日刊行,シュプリンガー・フェアラーク東京ISBN:4431710264



翻訳されていた「Mein verwundetes Herz」 —— ぜんぜん気がつかなかったなあ.検知アンテナを素通りされたみたい.去年の今頃に新刊で出ていた訳本.

独語原書は:Martin Doerry『» Mein verwundetes Herz « : Das Leben der Lilli Jahn 1900-1944』(2002年8月12日刊行, Deutsche Verlags-Anstalt, Stuttgart, ISBN:342105634X).この原書を手に取ったのは,2002年の夏にヘルシンキでの Hennig XXI の帰路,成田への乗り換えのため数時間を過ごしたフランクフルト国際空港の書店だった.レニ・リーフェンシュタールの部厚い伝記の近くに新刊平積みしてあった.見るからに「ホロコースト」な本だったが,その著者や内容についてはまったく事前知識がなかった.日本に帰ってからも,ぱらりぱらりと見た程度で,当然その内容は重いし,何となく敬遠しつつ本棚の上の方に並べたままになっていた.

訳本の解説を読むと,独語原書は出版後大きな反響を呼び,英訳された後に BBC のラジオ番組にもなったらしい:Martin Doerry(John Brownjohn訳)『My Wounded Heart: The Life of Lilli Jahn, 1900-1944』(2004年2月17日刊行, Bloomsbury Publishing PLC, ISBN:0747570469).終戦の前年にアウシュビッツで命を落とした本書の主人公であるユダヤ人女医 Lilli Jahn の息子の一人ゲルハルト・ヤーンは戦後,法務大臣を務めた.そして,著者は Lilli Jahn の孫にほかならない.ぜんぜん知らなかったなあ.