『鴨川ホルモー』

万城目学

(2006年4月20日刊行, 産業編集センター, ISBN:9784916199820



去年から気になっていた本.そーか,こういう小説だったわけね.一口目の味わいとしては,ほぼ同時期に出た秦建日子SOKKI!:人生には役に立たない特技』(2006年4月6日刊行,講談社ISBN:4062134128書評)にそこはかとなく似ているような.ちょっと屈折系の青春小説という点で.

何語であれ,ことばの勉強は苦しく愉しいな.※「レナウン娘」と聞いて旋律がすぐ口ずさめる世代ってどこまでだろう?

京大青竜会会長・菅原真の発言に注目(pp. 75-79) ——





菅原 真:「あるものは,あるのである.」

楠木ふみ:「そんなにあると言うのなら,見せてください.見せられないんですか?」

菅原 真:「それは無理……なんだよね.みんなにはまだ見えないのです.僕たちも諸君と同じ頃には,見えなかった.確かに,無理をすれば,僕たちも見ることができたのかもしれない.けれど,僕たちの先輩は見せてくれなかった.まあそれは,どうしても仕方のないことで,同時に必要なことだった,と今となっては思う.つまり,ある程度の準備が必要なんです.」



わけわからないまま,会長に言いくるめられてしまう彼ら.凡ちゃん,ガンバレ.後半になるとともに,内容がしだいに“陰陽師”化してくるところがおもしろい.京大青竜会の面々の中で,思わぬ伏兵ならぬ「異能者」として頭角を現してくるのはやはりこの人だったか.

全体としてフシギ系の小説.京都の土地勘がないと十分に楽しめない気もする.そもそも「500代」も続いている競技にしては,「なんで4大学対抗戦になるのん?」という疑問はありますが.東から京大,北から京都産大,南から龍谷大というのは,方角的にはまあいいとして,なんで西からやってくるという立命館が衣笠に移転したのは,“ホルモー”史的にはごく最近のことではないか? もっといえば,御所のすぐ北側の(清明神社に最も近いはずの)同志社がぜんぜん登場しないのはなんでやろう?