『妖怪学全集・第4巻』

井上円了著(東洋大学井上円了記念学術センター編)

(2000年3月20日刊行, 柏書房ISBN:4760117245目次



「コックリさん」と対決する円了センセ.本巻冒頭の『妖怪玄談』は明治中期の1887年に出された本.著者の処女作だという.地方によって異なるコックリさんの様式,その由来,そして憑き物落とし.この巻全体の1/10に過ぎないわずか50ページという分量だが,インパクトありまくり.

日本に「コックリさん」が初めて“渡来”したのは,この本が出版される2年前の1885年(明治18年)のことで,その“渡来地”は江戸時代から海外につながる伊豆・下田だったことを円了はつきとめる.それからほどなく,“上陸”を果たした「コックリさん」は日本の津々浦々に広く浸透し,あたかも日本古来の呪法であるかのような風説的誤解も生まれることになった.しかし,円了の推測では,下田の港に「コックリさん」をもたらしたのは,欧米からやってきた船とその船員だった.「コックリさん」の祖先は欧米で伝えられてきた降霊術の技法のひとつ「table-turning」であるとこの本では結論づけられる.

本書の後半では,「コックリさん」の性質をひとつひとつ挙げながら,「コックリさん」装置の物理的特性,そしてそれを囲む“信じやすい”人々の心理状態の産物として,「コックリさん」の“予言”が生み出されたのだと円了は憑き物落としをしてみせる.