『ヨーロッパ人相学:顔が語る西洋文化史』

浜本隆志・柏木治・森貴史(編著)

(2008年7月10日刊行,白水社,319+xiv pp.,本体価格3,400円,ISBN:9784560026342版元ページ



人相学・観相学(physiognomy)の歴史をたどった本.このテーマで1冊の本になるとはめずらしい.形態測定学の過去を掘り返していくと何世紀か前の「顔」の計測という水脈に突き当たる.アルプレヒト・デューラーレオナルド・ダ・ヴィンチの人体計測の中でも「顔の計測」はたいへん重要な位置を占めている.この本は届いて間もないのでまだブラウズしているだけだが,図版もたくさん載っていて参考になる情報が豊富であると期待される.




【目次】

序章 ヨーロッパ人相学とは(浜本隆志)

 人相学の歴史的な系譜 9
 人相学が提起するもの 19
 顔の「規範」と「逸脱」 23

第1章 アリストテレスルネサンス時代の観相学

1. アリストテレス観相学 27(柏木治)
 『動物誌』 27
 偽アリストテレスの『人相学』 33
2. ルネサンス観相学 39(柏木治)
 観相学の復活 39
 コクレス『観相学要略』 41
 大宇宙と小宇宙の照応 —— カルダーノと観額術 44
3. デッラ・ポルタの観相学 51(柏木治)
 伝統の総合 51
 自然学的観相学 54
 表情の理解へ 60

第2章 観相学の興隆と変質化

1. 宮廷社会と観相学 63(柏木治)
 太陽王観相学者 63
 情念の読解へ 69
 観相学と美術の結びつき 70
2. ラーヴァターの観相学 —— さまざまな知的伝統との関係 78(横道誠)
 分水嶺としての観相学 78
 観相学キリスト教神学 82
 観相学占星術 86
 観相学と数理主義的思考法 88
 観相学と処世術または社交術 92
3. 差別の人相学への変質 —— ユダヤ人差別のイメージと記号 96(森貴史)
 ユダヤ人差別の歴史と理由 96
 ユダヤ人の外見的特徴 100
 揶揄されるイメージとしての動物戯画 106
 類人猿とユダヤ人 110
 身体的特徴と捏造されたイメージ 114

第3章 異形の顔

1. メドゥーサの呪い 117(浜本隆志)
 醜いメドゥーサと美しいメドゥーサ 117
 メドゥーサの髪とヘビ 126
2. グリーンマン探訪 130(横井裕一)
 グリーンマンとは 130
 グリーンマン研究の開拓者たち 132
 グリーンマンの起源をたどる 134
 キリスト教化とグリーンマンの登場 141
 門に宿るグリーンマン 144
 地獄の顔と天の顔 —— グリーンマン図像学 150
 キルベック教区教会のグリーンマン 153
 バンベルク大聖堂のグリーンマン 157
 マールブルクグリーンマン 161
 グリーンマンの過去と現在 166
3. 異形の系譜 168(浜本隆志)
 ガーゴイルの謎 168
 悪魔の系譜 173

第4章 顔の虚像と実像

1. アルチンボルド・顔のコスモロジー 179(浜本隆志)
 アルチンボルドとルドルフ二世 179
 顔とマクロコスモス 182
 だまし絵とアレゴリーの世界 188
2. 鏡像と実像のラビリンス —— 分身と闘う方法 192(森貴史)
 鏡の感覚 192
 鏡の世界 194
 鏡と分身 198
 象徴としての鏡 201
 鏡像をめぐるタブーの伝承 206
 分身と決闘する 208
3. 仮面のドラマトゥルギー 213(浜本隆志)
 怪物クランプス 213
 仮面の習俗 217
 カーニヴァルの仮面 221

第5章 顔のパーツたち

1. 髭のパフォーマンス 225(浜本隆志)
 髭の文化史 225
 髭とキリスト教 231
 ヨーロッパ髭王列伝(赤髭王 青髭 ナポレオン三世と髭 ヴィルヘルム一世の皇帝髭 ヒトラーの髭) 232
2. 赤毛の両義性 242(柏木治)
 嫌悪される赤毛 242
 赤毛とブロンド 247
 娼婦たちの髪 252
 赤毛復権 257
3. 眼が放つ魔の視線と神のしるし —— 邪視とまじない 261(森貴史)
 「眼は口ほどにものをいい」 —— 「邪視」とは 261
 バシリスクの恐怖の眼力 262
 眼の呪いで石になる 267
 ひとつ目と四つ目の異能者たち 270
 シンボルとしての眼 277
 邪視から逃れるために —— 魔の瞳に魅せられて 280

終章 現代の人相学(柏木治)

 氾濫する顔/廃れる観相学 285
 「顔」と「顔面」 292
 ナルシス的なまなざし 297


あとがき 301(浜本隆志)
主要参考文献一覧 307
図版出典一覧 [x-xiv]
索引 [ii-ix]
編著者紹介 [i]