「メーリングリスト過去ログのアーカイヴがたどる運命について」

先日,とある昆虫学メーリングリストが閉鎖されるとの連絡があったので,過去ログの保全と公開を提言した.国内のアカデミック・メーリングリストを見回すと,投稿頻度は確かに単調減少だが,長年にわたって蓄積されてきた膨大な投稿ログのアーカイヴは大きな知的財産であると考えられる.メーリングリストの果たす役割は徐々に小さくなっていくのはしかたがないが,知的財産としての過去ログのもつ価値は別物だろう.できるならば,過去ログは将来にわたってきちんと保管され,同時に利用可能な形式で公開されるのが望ましいにちがいない.

たとえば,1990年代前半に Darwin-L という進化学メーリングリストを主宰していた Robert J. O'Hara は今でも彼のサイトの中に〈The Darwin-L Archives on the Historical Sciences〉という過去ログのアーカイヴを保管していて,インターネット公開している.同様に,TaxaCom という生物体系学メーリングリストでも〈The TaxaCom Archives〉としてアーカイヴを一般公開している.

もちろん,もともとクローズドに運営されてきたメーリングリストの過去ログをインターネット上で一般公開するというのは問題があるかもしれない.だからといって,メーリングリストの閉鎖とともに過去ログをすぐさま消去するのは適切ではないだろう.しかし,メールのやり取りを交わす機能をもたず,「過去ログ保存に特化」することは,少なくともMAFFIN上の FML を利用するメーリングリストでは可能だ.管理者ウェブからは会員の「投稿」と「配信」を自由にオン/オフできる.現時点では全員が投稿「オン」だが,これを一括して投稿「オフ」にするという手がある.

この措置をとれば,メーリングリストとしての本来の機能はなくなるが,会員限定でこれまで通り過去ログを参照することができる.MAFFINの過去ログ検索機能はとてもよくできているので,それだけを利用して,過去ログ参照に特化するという選択肢だ.この選択肢だと,過去ログを削除することなく,かといって無制限に一般公開もせず,今後も保全・活用できると思われる.

管理者としての最後の一仕事は,全会員のステータスを「投稿オフ」に一括変更することだけだ.残された問題があるとしたら,常時だれかひとりはMAFFIN傘下のメーリングリスト管理者である必要があるというだけだ.しかし,会員の出入りはもうなくなるので,管理者とはいえ実質的な負担はないも同然だろう.

—— EVOLVEBIOMETRY をはじめ,もう二十年近くさまざまなメーリングリストの運営をしてきたワタクシにとっても,蓄積された過去ログをどのようにしてアーカイヴ保存・公開していくかは関心をもっている.近いうちに何らかの方針を出したいと思う.