〈The Complete Work of Charles Darwin Online〉

http://darwin-online.org.uk/



チャールズ・ダーウィンの“ブラック・ボックス”が全面公開された —— チャールズ・ダーウィンの著作や手稿のインターネット公開を進めている〈Darwin Online〉は,このたびダーウィンの手稿・原稿・資料などを一挙に公開した(→「Charles Darwin's Papers Online」at 17 April 2008).公開点数は2万件,画像枚数にして約9万枚という膨大な量だ.

公開された物件の一覧リスト(「Browse Darwin's Papers」)を見ると,要するに今回インターネットで無料閲覧が可能になったのは,ケンブリッジ大学図書館が長らく管理していたダーウィン資料〈DAR〉であることがわかる.具体的には「DAR1」〜「DAR242」とナンバリングされている資料群だ.ダーウィン研究者だった Dov Ospovat はこの資料群をダーウィンに関する“ブラック・ボックス”と呼んだほど高い学問的価値をもっている.

これまではケンブリッジに出向かないかぎり,これらの“ブラック・ボックス”を開くことは不可能だった.それが今後は世界中どこからでも無償でアクセスすることができる.日本での新聞報道では,たとえば「『種の起源』草稿を公開」(IZA, 2007年4月17日付)などと書かれていることが多い.しかし,公開された資料のうち『種の起源』に関するものはごく一部で,ノートブック類や他の著作・論文に関わる資料類の方がずっと多い.

—— こう考えると,今回のダーウィン“ブラック・ボックス”の全面公開は,報道されているよりも,もっと深い意義がある画期的なことだと思う.