小川洋子,クラフト・エヴィング商會
(2014年1月23日刊行,筑摩書房,東京,206 pp., 本体価格1,600円,ISBN:9784480804501 → 版元ページ)
小川洋子による全5話のミニ小説(「注文書」)とクラフト・エヴィング商會によるそれぞれを “物象化” した作品(「納品書」)そして再び小川洋子による結末(「受領書」)の三点セットが現実と非現実の境目をにじませる.『どこかにいってしまったものたち 』,『ないもの、あります 』,『らくだこぶ書房21世紀古書目録 』に続く本書は,ひさしぶりにクラフト・エヴィング商會の “世界” を堪能させてくれた.精妙に創られた作品に《箱もの》が多いのは「コーネルの箱」をさりげなく意識している?
参照:チャールズ・シミック[柴田元幸訳]『コーネルの箱』(2003年12月10日刊行,文藝春秋,東京,165 pp.,ISBN:4163224203 → 書評|版元ページ)/デボラ・ソロモン[林寿美・太田泰人・近藤学訳]『ジョゼフ・コーネル:箱の中のユートピア』(2011年2月14日刊行,白水社,東京,497+xv pp., 本体価格3,800円,ISBN:9784560081099 → 目次|版元ページ).
【目次】
case1 人体欠視症治療薬 17
注文書 19
納品書 35
受領書 45case2 バナナフィッシュの耳石 51
注文書 53
納品書 67
受領書 77case3 貧乏な叔母さん 85
注文書 87
納品書 103
受領書 119case4 肺に咲く睡蓮 125
注文書 127
納品書 143
受領書 155case5 冥途の落丁 165
注文書 167
納品書 183
小川洋子、クラフト・エヴィング商會を訪ねるの巻:物と時間と物語 195
本書の源泉となった五つの小説 204
「ないもの,あります」を旨とするクラフト・エヴィング商會は,ワタクシの「統計学概論」高座には必ず登場する.データと推論とをつなぐアブダクション的推論,実証主義と懐疑主義をめぐるカルロ・ギンズブルグの論議,そして第一種過誤と第二種過誤の本性について説明するとき,クラフト・エヴィング商會『クラウド・コレクター : 雲をつかむような話』(1998年11月,筑摩書房,ISBN:4480872965)と『ないもの、あります』(2001年12月,筑摩書房,ISBN:4480873325)はいい “教材” である.