『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』感想

宮崎伸治
(2020年10月1日刊行,フォレスト出版,東京, 246 pp., 本体価格1,400円, ISBN:978-4-86680-912-0版元ページ

サクッと読了.今まさに翻訳をしているときに読んだのでなかなか “臨場感” あふれまくり.この著者がかいくぐってきた “修羅場” はワタクシにはちょっと想像できない.出版社や担当編集者との切った張ったの “殺陣” の場面とか,裁判所での法廷闘争とかを乗り切ったと書かれているが,さすがに一人では擦り切れたにちがいない.ワタクシは本の出版あるいは翻訳に関しては経験が浅いが, “お金” に関しては気をつけるようにしている,しかし,まだまだですな.以前,ある翻訳を手がけたとき,出版直前になって「原稿買い上げかそれとも印税方式か」という選択を迫られたことがあった.本の場合,増刷時の印税収入を考えて「買い上げ」ではなく「印税」の方が著者にとっては潤うので,その旨を出版社に伝えたところ「OKですがあまりちがいはないですよ」と.そのときは「フシギなことを言うなあ」と思ったのだが,あとで仄聞するところでは,その出版社は売れ行きがよくても増刷はしないポリシーとのことだった.道理でちがいがないはずだ.その翻訳書はすでに品切れで古書価格は原価の三倍くらいに高騰している.長く生きてりゃいろいろあるわな.