『進化理論の構造(1・2)』近刊予告

ティーヴン・ジェイ・グールド[渡辺政隆訳]
(2021年11月刊行予定,工作舎,東京 → 近刊予告

究極の “鈍器本” が満を持して(いったい何年待っただろうか)翻訳出版されるとの予告.全2巻で2,000ページ! この際,価格はどうでもいいのだ.グールド『進化理論の構造』は沖縄の “シーサー” みたいなものなので,研究室の門口に立てておくと “魔除け” になるにちがいない(知らんけど).本書が翻訳されることはもう何年も前から翻訳者と出版社からじかに情報を得ていたので,「いつか出る」ことは知っていたが,「いつ出るか」は予想できていなかった.さて,どの媒体でどなたが本書を書評するのだろうか.

 

“グールド” の学問的・社会的受容の変遷史はとても興味深い.Gould-Lewontin 1979 の「スパンドレル論文」は確かに自然淘汰批判だが,生物学者に向けて書かれてはいない気がする.あの論文のレトリックについては:Jack Selzer (ed.) 『Understanding Scientific Prose』(1993年刊行, The University of Wisconsin Press[A Badger Reprint], Madison, xvi+388 pp., ISBN:0-299-13904-2 [pbk])でくわしく分析されている.いま検索したら,ウリカ・セーゲルストローレ[垂水雄二訳]『社会生物学論争史:誰もが真理を擁護していた(1・2)』(2005年2月23日刊行,みすず書房,東京, 上巻:ISBN:4-622-07131-2 / 下巻:ISBN:4-622-07132-0書評)にもスパンドレル論文の論争の背景が詳述されていた.

 

ついでだが,Eldredge-Gould 1972 の「断続平衡論文」もまた,生物学者向けではなく,どう読んでも科学哲学者を念頭に置いた内容だった.ワタクシは修士に入ってすぐにこれを読んだが,前後の “ちゃんとした” 古生物学の論文たちから浮きまくっていた.