『カラスと京都』

松原始

(2016年8月8日刊行,旅するミシン店,東京, 303 pp., 本体価格1,500円, ISBN:9784908194030目次版元ページ

著者が京大理学部動物学教室に在籍した1990年代数年間の回顧録.実態はもっとハチャメチャなんじゃないかと思いつつ読了したのだが,そこはきっと四半世紀が経過したことによる “良識的編集” が施されているのだろうと思う.文字になっていない「裏レイヤー」がきっとあるにちがいない.そういう部分も含めてとても貴重で率直で共感を呼ぶにちがいない自伝だ.略されているファーストネームがすぐに “補完” できる読者ならきっと大喜びするだろう.今に比べて格段に “自由度” の高かった時代の大学ではこういう学生生活があったことをワタクシたちの世代は知っている.本書にはワタクシの知人も何人か登場しているし,以前に関係者たちから聞いてきたいろいろなウワサ話が随所で思い浮かぶ.イラスト秀逸.本書は千駄木の〈往来堂書店〉平台でゲットしたが,一般の書籍流通ルートには乗っていないとのこと.版元の〈旅するミシン店〉は谷中にある工房.入手に手こずるかもしれないが多くの読者の手に届いてほしい.