『Rivers of Life, or Sources and Streams of the Faiths of Man in All Lands; Showing the Evolution of Faiths from the Rudest Symbolisms to the Latest Spiritual Developments. Two volumes』

J. G. R. Forlong

(Two volumes,1883年,Bernard Quaritch, London)

比較宗教学の古典.「Privately printed for subscribers only」とのことなので,一般に売られた本ではなく,事前予約者にのみ頒布するというかたちでの限定的な出版物だったのだろう.先年,リプリント版が出たが,原本はほとんど入っていないらしく,日本の公的機関では奈良女子大にしか蔵書されていないようだ.

本文2巻だけでも1200頁を越す大著だが,別添されている世界の“宗教系統樹”チャートが圧巻(サイズは7.5 feet × 2.25 feetもある).人間の宗教的思想の根源は,「太陽崇拝」「火炎崇拝」「樹木崇拝」「祖先崇拝」そして「性器崇拝」の五つにさかのぼれると仮定して,宗教のリネージがどのように分岐し,また融合してきたのかをたどろうとする.Forlong にとって「人間の宗教的信念」はどのように「進化」してきたと捉えられたのだろうか.

中尾佐助が『分類の発想』の中で展開している“宗教分類”の体系は,Forlong のそれと比べるのが適当だと思うようになった.〈中尾佐助著作集〉第V巻『分類の発想』の月報でもその点に言及した.

【目次】
Volume I
I. Introductory
II. Tree Worship
III. Serpent and Phalik Worship
IV. Fire Worship
V. Sun Worship
VI. Ancestor Worship

Volume II
VII. Early Faiths of Western Asia as in Kaldia and Asyria
VIII. Fauths of Western Aborigines in Europe and Adjacent Countries
IX. Faiths of Eastern Aborigines, Non-aryan, Aryan and Shemitik

Appendixes
I. A Colored Chart of All Faith Streams, 7 1/2 Feet by 2 1/2 Feet, either Folded or on Roll
II. Map of World, as Known about Second Century B.C., Showing Movement of Early Races and Faiths
III. Sketch Map of Ancient India, and from Baluchistan to Anam, Showing Early Tribes, Their Sacred Places., &c,...
IV. Synoptical Table of Gods, God-ideas and Many Features Which All Faiths Have More or Less in Common. If on Roller This Is 3 Feet by 21 Inches,...

書評の「掟」?

いつも近刊情報源として重宝している『これから出る本』の最新号(2005−No.4[3月上期号])に〈書評の「掟」〉というエッセイが載っている(p.8).著者は田中弘という会計学の研究者.書評にも「掟」があるのだと彼は言う:1)決して貶さない;2)自分の意見を書かない.なるほど,業界によってはまだそういう「掟」があるんだなあ(それと同様の意見は,赤坂憲雄書評はまったくむずかしい』にも書かれている).



ぼくは〈掟破り〉なので,どちらの不文律も遵守するつもりはさらさらありません.献本してもらってぼこぼこに叩いたこともあったし,書いてある内容に関して異を唱えることもよくあった.研究者としての生い立ちの過程で,Systematic Zoology 誌の“書評論文”をさんざん読んできた経験があるので,書評というのは基本的に自分のスタンスをはっきり出して,書評読者にアピールする場であるという認識がある.



ターゲット本に関して「ぜひとも読むべし/読んではいけない」という所見を書かずして,いったい何のための書評かということだ. 読む/読まないは最終的には書評読者の判断に委ねられているのだから,個人の意思決定にどれくらい関われるかどうかが書評の意義ということになるはずだ.

『ブーレーズ書簡集:シェフネールとともに近現代の作品を語る』ピエール・ブーレーズ,A. シェフネール

(2005年3月刊行予定,音楽之友社ISBN:4276203732



ブーレーズ作曲の音楽ってときどきふと聴きたいときがある.〈ル・マルトー・サン・メートル[打ち手のない槌]〉の総譜だけはもっているけど.


『NHK日本語なるほど塾2005年3月号』山下好孝

(2005年2月18日刊行,NHK出版)



アノ山下せんせ,再登場.今号は〈うちかて20分でマスターできるわぁ 基礎関西語〉.名著・山下好孝関西弁講義』(2004年2月10日刊行,講談社選書メチエ292,ISBN:4062582929)にとことんしびれた読者はもう買うしかないやん.なあ.