書評の「掟」?

いつも近刊情報源として重宝している『これから出る本』の最新号(2005−No.4[3月上期号])に〈書評の「掟」〉というエッセイが載っている(p.8).著者は田中弘という会計学の研究者.書評にも「掟」があるのだと彼は言う:1)決して貶さない;2)自分の意見を書かない.なるほど,業界によってはまだそういう「掟」があるんだなあ(それと同様の意見は,赤坂憲雄書評はまったくむずかしい』にも書かれている).



ぼくは〈掟破り〉なので,どちらの不文律も遵守するつもりはさらさらありません.献本してもらってぼこぼこに叩いたこともあったし,書いてある内容に関して異を唱えることもよくあった.研究者としての生い立ちの過程で,Systematic Zoology 誌の“書評論文”をさんざん読んできた経験があるので,書評というのは基本的に自分のスタンスをはっきり出して,書評読者にアピールする場であるという認識がある.



ターゲット本に関して「ぜひとも読むべし/読んではいけない」という所見を書かずして,いったい何のための書評かということだ. 読む/読まないは最終的には書評読者の判断に委ねられているのだから,個人の意思決定にどれくらい関われるかどうかが書評の意義ということになるはずだ.